特性要因図

特性要因図(Cause effect diagram)

スポンサーリンク

アフィリエイト広告を利用しています。

 

1. 特性要因図とは

特性要因図は、「仕事の結果(特性)」とそれに「与える原因(要因)」を系統的に整理した図です。特性と要因との関係を矢印で結んで示したものです。矢印の先に最終的に特性が来るようにして、たくさんの要因が特性に対して、どのような因果関係になっているかが一目でわかるように、体系的に示した図です。

特性要因図は、「一つの結果にはたくさんの原因がある。これを掘り出すために」と、石川馨先生が考え出したもので、海外では”Ishikawa diagram”と呼ばれています。
また、図の形から「魚の骨(fish bone diagram)」とも言われています。

図 1 特性要因図の概念図  参考出典:企業内テキスト

特性とは、品質特性を省略した言葉で、長さや速度、不適合率など、製品の品質や性能、機能を表す言葉です。製品は我々の仕事の結果として生み出されたものです、同じように考えると、特性は仕事の結果を表したものということができます。そこで、品質管理では、「特性=結果」として取り扱われます。

要因とは、原因の中で主なものをいいます。製品の品質を表す特性は、数多くの原因によって変化します。その原因は無数にあると言えるでしょう。それらの原因のうち、特性に影響を与えていると考えられるものを要因として特性要因図に書きます。

 

2. 特性要因図の特徴

特性要因図は、QC7つ道具の中で、唯一、数値データで無く、言語データを用いる手法です。持ち合わせのボキャブラリが貧しければ、表現も貧しくなり、考えや心の持ち方も大雑把になりがちです。
特性要因図でよく言われるのは、カレイの骨のように大雑把なものではなく、細かい要因も漏らさず列挙して大骨のまわりに小骨、小骨のまわりに孫骨というふうにたくさんの骨が寄り集まった「ゴジラの骨」のように、複雑なものほど優れた特性要因図といわれています(図2)。

図 2 カレイの骨よりゴジラの骨   出典:すぐに使えるQC技法_改

 

3. 特性要因図の作り方

ここでは、特性として「歯車から出る騒音」に対する特性要因図の作成手順について見ていきましょう。

[手順の概要]
手順1:問題とする特性を決める。
手順2:特性と背骨を描く。
手順3:大骨を記入する。
手順4:中骨、小骨、孫骨を記入する。
手順5:要因を確認する。
手順6:要因の重みづけをする。
手順7:関連事項を記入する。

それでは、順番に見ていきましょう。

手順1:問題とする特性を決める。

前述したように、特性とは「仕事の結果」としてでてくるもののことをいいます。製品の品質やコスト、生産量、安全など職場で問題になっているすべてが対象となります。良い特性要因図をつくるためには、この特性をできるだけ具体的に表す必要があります。
特性の表し方で注意が必要なことです。例えば、「改善提案の提出が少ない」とするのと、「改善提案を多く出すには」とするのでは出てくる要因が異なります。

特性要因図は原因を探索する手法です。「改善提案の提出が少ない」という現状が、どのような原因でそうなっているかを追求したいのですから、「改善提案の提出が少ない」を特性とすべきです。
もしこれを、「改善提案を多く出すには」とすると、改善提案の提出が少ない原因が出ないで、改善提案を多く出すための手段や対策、要望が出てきます。
特性要因図は、原因を追究する手法であって、対策を検討する手段ではないことに留意してください。

特性は、事実をできるだけ具体的に表現してください。可能なら、数値で表すことができる具体的なものが望ましいです。例えば、「改善提案の提出が少ない」より、「改善提案提出の目標○○件が達成できない」とした方がより具体的な要因が出やすいからです。

数値を特性とする具体的な事例があればよかったのですが、この研修では、「歯車から出る騒音」を特性として取り上げましょう。

 

手順2:特性と背骨を書く。

図 3 のように、右端に特性を書いて、四角の枠で囲みます。魚の頭になります。四角枠に向かって左から右に太い矢印を書きいれます。この矢印を、背骨あるいは幹といいます。
ここでは、特性として「歯車から出る騒音」を記入します。

図 3 特性と背骨を書く

 

手順3:大骨を記入する。

次に大骨(大枝ともいいます)を記入します。数多くある要因から特性に特に大きな影響を与えると考えられる要因を4~8個ぐらい抽出して要因の大分類項目として記入します。これらを四角の枠で囲ってそこから背骨に向かって斜めに矢印を書いて大骨とします。
ここでは要因として、歯切り後の工程として、「噛合い調整」、及び「ラッピング」、「洗浄」、「慣らし運転」、「騒音検査」を挙げます(図 4)。

図 4 大骨を記入する

ものづくりの現場では、大骨の分類に4Mがよく使われます。4Mとは、”Man”(人)、”Machine”(機械)、”Material”(材料)、”Method”(方法)のそれぞれの頭文字が”M”を取っていいます。その他、5M(”Measurement”(測定)を追加)、6M(”Money”(資金)を追加)、4M+E(”Environment”(環境)を追加)、5M+Eなども、よく用いられます(表 5)。

表 5 4M,5M,6M,4M+E,5M+E

 

手順4:中骨、小骨、孫骨を記入する。

大骨の要因となるものを探索して中骨の項目とします。次に中骨の要因になっているものを小骨とし、さらに小骨の要因となっている要因を探索して、細かく分類して矢印線で記入します。

図6 中骨、小骨、孫骨を記入

 

手順5:要因を確認する。

要因が出尽くしたと判断したら、それらを見ながら内容を確認していきます。このとき参加者全員で確認することが大事です。確認ポイントとしては2つ考えられます。

ポイント1:要因に漏れはないか。
抽出した要因に漏れはないかをチェックします。一人の人間だけでは、ものの見方や考え方にどうしても偏りを生じます。多くの人が意見を出し合って、それを整理することにより、広い範囲のいろいろなものの見方ができて、要因を漏れなく上げることができます。
このように、確認作業もメンバ全員で行ってください。さらに、後工程の人たちや上司、スタッフなど関係者の意見を聞くことができれば、さらにレベルの高い特性要因図が生まれます。

ポイント2:因果関係を確認する。
大骨の要因が中骨、中骨の要因が小骨、小骨の要因が孫骨になっているか、「因果関係がしっかり押さえられているか」、「間違ったところに入っていないか」をチェックします。このときのチェックの仕方として、なぜなぜ分析の手法を使うと有効です。ここまで作成したものを、図 7 に示します。

図 7 要因を確認する

 

手順6:要因の重みづけをする。

一つ一つの要因に対して、特性に与えている影響の度合いと対策が可能かという2つの側面から、要因の重みづけを行います。
特性に対して何が大きな要因か、どの要因が一番影響を与えているかを、メンバ全員で検討してください。実際に仕事をしていて得た経験に基づいて、特性に大きな影響を与えていると思われる要因に対してそれを四角や丸で囲んだり、色を変えたりして一目でわかるように表示します(図 8)。

図 8 要因の重みづけ

手順7:関連事項を記入する。

特性要因図が出来上がったら、余白に特性要因図の名称や、作成年月日、作成者などの、関連事項を記入します。これで特性要因図が完成しました(図 9)。

図 9 完成した特性要因図

 

4. 特性要因図の作り方のポイント

特性要因図を作成する際のポイントがいくつかあります。

(1)要因は多くの人から、たくさん集める。

このように、良い特性要因図を作成するためには、一人で考えるのではなく、同じ職場の仲間だけでなく、出来るだけ多くの関係者に集まってもらい、自由に発言できる環境でいろいろな原因を抽出するのが望ましいです。BS(ブレーンストーミング)の手法は、自由な発想をたくさん集めるのにかかせません。一見関係なさそうな原因でも思いつくものは全て要因として、書き込みましょう。
多くの人の発想を詰め込んで完成した特性要因図は、真の原因を探り当てて、小手先の改善ではなく、根本的な対策が可能です。

(2)常に加筆・修正をしていく。

特性要因図は、書きっぱなしではうまく活用しているとは言えません。完成した特性要因図は、職場に掲示しておき、何か問題が起きたときには、その特性要因図で要因や対策を検討するようにしてください。
要因について新しいことがわかったときは、それを追加したり、修正したりしてください。特性要因図は、自職場の技術や現在使っている事実を、誰にでもわかるようにまとめたものです。
自職場の今の状態を反映している特性要因図を作成して、ものづくりと特性要因図とを結びつけて、自職場の管理・改善を進めて行くことが重要です。

(3)特性は悪さ加減で表し、数値で表せるものが望ましい。

特性は、結果として得られた事実、俗にいう「悪さ加減」で表すようにしましょう。できれば数値で表すことが出来ればなお良いです。良い特性要因図を作るコツです。
特性を悪さ加減で表すと、その要因も具体的な形で示すことが出来、要因の追究がしやすくなり、特性要因図を生きたものに仕上げることが出来ます。さらに数値で表すことが出来れば、要因の影響度をデータで解析したり、対策の効果を定量的に調べることが可能です。

(4)特性要因図は特性ごとに何枚でも作る。

複数の特性をまとめて一つの特性要因図で作ってはどうかと考える人もおられます。似たような特性なら要因が重複する場合も多いし、スペースも節約できるのではと、一見合理的なようにも思えますが、絶対にお勧めしません。
例えば、寸法不良と形状不良とをいっしょにして、「製品の寸法・形状不良」を特性とする特性要因を作成したとします。しかし、これでは特性と要因との関係があいまいになり、良い処置に結びつきません。やはり、それぞれの特性ごとに別々の特性要因図を作るべきです。
不適合品が発生したとしても、その内容は様々です。不良の内容により、要因も対策も違ってきます。例えば、寸法不良や、傷不良、加工不良、面粗度不良など、まず不良内容を層別して、それぞれの不具合内容ごとに特性要因図をつくることが必要です。

(5)重要要因を取り出して、それを特性として新たに特性要因図を作る。

特性要因図を書いて、重要な要因を見つけた場合、さらに深堀して、重要な要因を特性に取り。さらに詳しい特性要因図を作り、要因を細かく分解して、さらに追及を進めて行くことも大切です。
例えば、機械期加工職場で、加工時に使用する標準刃具の取替に時間がかかるということで、これを特性にとって特性要因図を作成しました。その結果、刃具図が見にくいことが大きな要因であることがわかりました。それで、さらにこの「刃具図が見にくい」を特性としてさらに特性要因図を作成し、対策を考えました(図 10)。

図 10 特性要因図の展開   出典:すぐに使えるQC手法_改

有効な対策を打てる要因、真の要因に到達するためには、1枚の特性要因図だけで済ませるのではなく、何枚も特性要因図を書くことが有効です。

(6)現地・現物で事実を確かめながら原因を考える。

特性要因図の作成過程では、要因が複数考えられる場合、現場で現物をみて現実に起こったこと(事実)を原理・原則に従って解釈して、真の要因に到達することが必要です。

 

5. 特性要因図の活用の仕方

ここでは、特性要因図の活用の仕方についてまとめてみましょう。

(1)特性要因図が適用できる範囲は広く、どこでも、誰でも使える。

特性要因図が適用できる範囲は広く、ものづくりの職場ではもちろん、事務やサービスの問題についても適用できます。どこでも誰でも使えますので、あまり難しく考えないで、ちょっと困ったくらいの簡単な問題でも、あまり難しく考えずに、気軽に一度書いてみることをお勧めします。意外と使えるじゃないかと見直せますよ。

(2)特性要因図を用いると、話し合いが活発化できる。

特性要因図は、一つのテーマについて、皆が持っている知識や経験、意見を整理してまとめる手法です。皆で一緒になって特性要因図を作ると、それぞれ皆さんが頭の中にあるものを引き出すことが出来ます。その場で出た意見は、特性要因図に書き込まれますので、いました発言はテーマのどこの位置に当てはまるのかがすぐにわかります。そういう意味で、特性要因図を前において話し合いすることにより、能率よく話し合いを進めることが出来ます。

(3)特性要因図は品質管理の道具。

特性要因図を、職場で皆さんが見えるところに掲示していれば、不適合品が発生した、クレームが来たといった場合に、特性要因図を皆さんで見ながら、その原因を探し出すのが容易になります。さらに、原因に対して、速やかに適切な対策を打つことが可能です。
特性要因図は、品質管理のための重要な道具です。

(4)特性要因図は改善の出発点。

特性要因図は、問題の原因を整理し、改善点を見つけるときに用いるQC手法です。職場で改善を進めるために、必ず用いられる手法です。特性要因図は、問題解決・改善の出発点です。

(5)特性要因図を書くことはOJTになる。

特性要因図を書くことは、職場の皆さんの経験や技術を棚卸しして、それらをまとめるということになります。これは皆さんが持っておられる暗黙知を、特性要因図という形式知に落とし込むということです。従って、特性要因図は、皆さんの職場がお持ちの技術の内容や、現在皆さんがお持ちの事実を紙に落とし込んだものですから、OJTを行う際に、とても有効な手法です。

(6)特性要因図は職場の技術水準を示す。

特性要因図は、皆さんの職場が現在お持ちの技術の内容をわかりやすく示したものです。作業標準書を作成したり、改訂したりする際に特性要因図を用いると、仕事の内容が詳細に理解することが出来、その作業が容易になります。
特性要因図を見ると、その職場の技術水準がわかると言われています。

 

6. 補足

(1) 特性要因図の起源:

特性要因図について、石川先生がお書きになっているのでは、「目的・結果である特性と工程の要因との関係をわかりやすくするために図で表すことを思いつき、これに特性要因図という名称をつけた。これが1950年から51年頃のことである。最初の内は、教室で講義用に使っていたのだが、1952年に川崎製鉄(現、JFEスチール)の葺合工場で紹介したところ、標準化をはじめとして、色々と役に立った。」とのことです。
従って、実践的に使い始められたのは1952年からといえます。その後、1960年にはジュラン博士が、日本訪問時に石川先生からの説明に、非常に関心を持たれて、彼の著作である品質管理ハンドブックに掲載されたとのことです。その時に、”Cause & Effect Diagram”、”Fish Bone’s Diagram” とともに、”Ishikawa Diagram” と命名されたそうです。

 

(2) 要因の例:

製造業の分野では、4Mや4M+E、5M+Eなどが用いられますが、サービス業などほかの分野では、以下のような要因も考えられます。
・ 4S: Supplier(サプライヤ)、System(システム)、Surrounding(周囲)、Skill(スキル)
をいいます。サービス業界で一般的に使用されていますが、ほぼどの業界でも使用できます。

・ 8P: Procedure(手順)、Policy(方針)、Place(現場)、Product(製品)、People(人員)、Process(工程)、Price(価格)、Promotion(プロモーション)です。これも、4Sと同様にサービス業界で一般的に使用されていますが、ほぼどの業界、業種で使用されます。

 

 

参考文献
すぐに使えるQC手法 - QC七つ道具で問題解決  日科技連出版社  1988年

引用図表
図 1 特性要因図の概念図  参考出典:企業内テキスト
図 2 カレイの骨よりゴジラの骨   出典:すぐに使えるQC技法_改
図 3 特性と背骨を書く  ORIGINAL
図 4 大骨を記入する
表 5 4M,5M,6M,4M+E,5M+E  ORIGINAL
図 6 中骨、小骨、孫骨を記入  ORIGINAL
図 7 要因を確認する  ORIGINAL
図 8 要因の重みづけ  ORIGINAL
図 9 完成した特性要因図  ORIGINAL
図 10 特性要因図の展開   出典:すぐに使えるQC手法_改

ORG:2024/09/25