パレート図

パレート図(Pareto chart)

 

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1. パレート図とは

パレート図は、問題や課題について重点指向を行うのに役立つツールです。
重点指向とは、複数の問題が存在するときに、それらの中で最も重要なものを優先的に取り上げて、多くの原因の中で結果に対して最も影響度が高いものから対策を打つことをいいます。

パレート図は、ものづくりで問題となっている不良品や、クレーム、欠点、事故などの不具合を、その現象や原因別に分類してデータを取り、不良件数や損失金額などの値の大きい順に項目を並べた棒グラフと、それぞれの項目の累積和を示す折れ線グラフとの組合せにより、視覚的に判断できるように作られます。

パレート図の基本的な考え方は、「不良品数や損失金額の大部分は、多くの項目のうちのごくわずかの項目によって占められる。」という「パレートの法則」に基づいています。この法則は、イタリアの経済学者パレート(V. Pareto;1848-1923)により考え出されたものですが、これをUSAのコンサルタントのジュラン(J. M. Juran)が、品質管理の分野に適用したのがパレート図の始まりです。
なお、マーケティング分野では「ABC分析」と呼ばれます。

         パレート                   ジュラン

2. パレート図の特徴

パレートの法則は、別名「80:20の法則」と呼ばれることがあります。問題解決を行う場合、原因となる多くの事象の内、2割程度の事象により多くの問題(8割程度)が影響を受けるという経験則です。

例えば、製品別不良発生件数や不良による損失金額の8割程度は、2割の製品により占められる傾向があるというものです。これらの問題の解決手段としてパレート図を作成することにより、最重要・最優先すべきものが何かを「見える化」することができます。

パレート図は、ものづくりの現場で用いられるQC手法の中でも最も重要な手法の一つです。また、だれでも書くことができる最も容易な手法です。そのため、問題解決のいろいろなステップで活用されるとともに、現状および活動後の報告や記録に使うことができ、QCストーリーでは重視されています。

3. パレート図の活用の仕方

ものづくりの現場では、製品の不良発生は、損失金額が発生してコストに影響し、利益が減少するため改善すべき重要課題です。従って、製品の不良発生件数と、不良原因や損失金額などを考慮してパレート図を作成することにより、最も重要かつ最も優先すべき事項を特定することができます。
ここで重要なのは、最重要・最優先の解決すべき問題や課題を解決した後についてもパレート図を作成して、解決前後・改善前後のパレート図を比較して、効果確認を行うことの大切さです(図1)。
そして、改善内容についてQC工程表の修正や、作業手順書への落とし込みなどにより、再発防止策、横展開を行うことが重要です。

図1 改善前後の比較   ORIGINAL

4. パレート図の作り方

ここでは、化粧品の充填包装ライン職場のQCサークルが、工程不良低減のため取り組んだテーマを例題として、パレート図の作り方を見ていきましょう。

[手順の概要]
手順1:テーマを決めて、データを収集する。
手順2:分類項目別にデータを集計する。
手順3:計算表をつくる。
手順4:累積和、比率、累積比率を計算する。
手順5:必要事項を記入する。
手順6:縦軸、横軸を描く。
手順7:棒グラフ(柱状図)を描く。
手順8:累積折れ線グラフを描く。
手順9:累積比率の目盛りを描く。

それでは、順番に見ていきましょう。

手順1:テーマを決めて、データを収集する。
まず最初に、取り上げるテーマを決めます。この事例ではテーマを「加工時に発見される鋳造不良」としました。これは鋳造品を荒加工後に確認すると鋳造欠陥が多く、廃棄によるムダな工数が多く発生している状態でした。
次はデータの収集です。鋳造不良のデータを集めるのですが、不良の内容はいろいろあります。ここでは鋳造不良を不良内容により分類することにします。不良項目別に記録できるチェックシートを作成します。

データを集める際の注意点は、
・データを集める方法や期間を決める。
・縦軸には、欠点や不良などテーマに関連した特性値を取る。
縦軸に取られる特性値としては、品質や金額の他に、時間、安全、モラルなど、問題にしようとして
いる横軸の分類項目に対応する特性値を取ることができます。

縦軸の分類項目、横軸の特性値に取り上げ可能な項目を表4 に示します。
この分類項目の決め方、すなわち特性値の層別の仕方をいかにうまく行うかにより、役に立つパレート図になるかどうかのポイントになります。

表2 パレート図で縦軸・横軸に取り上げられる項目  出典:参考QC7つ道具で問題解決

手順2:分類項目別にデータを集計する。
データが集まれば、分類項目別にデータの集計をします。チェックシートを用いて収集した4か月分のデータを、不良項目別、発生月別に集計すると表3 のようになります。
パレート図の縦軸の特性値となる不良件数を、分類項目別に4か月分のデータを集計します。データ数の少ない不良項目は、まとめてその他としています。

表3加工後に発見される鋳造不良   ORIGINAL

手順3:計算表をつくる。
データの集計が完了したら、データの大きさの順に不良項目を並べ替えて計算表(表4)をつくります。その他の項目は、数値が大きくなっても最後に持ってきます。このとき、数値が極端に大きければ分類項目の層別方法を見直す必要があります。

表4 パレート図作成のためのデータ計算表

手順4:累積和、比率、累積比率を計算する。
作成した計算表のそれぞれの項目の累積数、比率、累積比率を計算していきます(表5)。

表5 累積和、比率、累積比率の計算結果  ORIGINAL

手順5:必要事項を記入する。
計算表には、データ数や品目、データ採取目的、作成日、記録者などの必要事項も記入しておく必要があります。何のために、誰が、何時作成したのかを明確にしておかなくてはなりません。

手順6:縦軸、横軸を書く。
方眼紙を準備して、それに縦軸、横軸を記入して、基準線を0として、縦軸にデータの目盛りを入れます。このときに縦軸にデータの単位を描く必要があります。ここでは個になります(図6)。

図 6 縦軸・横軸を描く  ORIGINAL

手順7:棒グラフ(柱状図)を書く。
データの大きい順に棒グラフを書いていきます(図7)。このとき、棒の幅は各項目とも同じにして、棒と棒との間に間隔を開けないようにします(柱状図)。

図7 棒グラフを描く  ORIGINAL

手順8:累積折れ線グラフを書く。
累積数を棒グラフの柱の右肩に打点して、それらの点を直線で結びます。この折れ線を累積折れ線またはパレート曲線といいます。

手順9:累積比率の目盛りを書く。
累積比率の目盛りを入れて、パレート図が完成します。
累積比率の目盛りは、一番右側の棒グラフ(「その他」の棒グラフ)の右肩から縦軸を上方に伸ばして、累積折れ線の終点と交わる点まで線を引き、横軸を0、累積折れ線の終点を100%とします。その間を等分してメモリを入れて、累積比率と%とを記入します。
データ数など必要事項を記入すれば、パレート図の完成です(図8)。

 

図8 パレート図の完成  ORIGINAL

5. Excelによるパレート図の描き方

同じデータを用いて、Excelによりパレート図を描く手順を説明しましょう。
[手順の概要]
手順1:データ集計とデータを並べ替える。
手順2:パレート図を生成する複合グラフを選択する。
手順3:第2軸(累積比率)の設定。
手順4:第1軸(不良項目)の設定。
手順5:不良項目の幅を最大限にする。
手順6:累積比率グラフの開始点を零点に移動させる。
手順7:項目幅を調整する。
手順8:必要項目を記入して完成させる。

それでは、順番に見ていきましょう。

手順1:データ集計とデータを並べ替える。
データを集計します。累積比率を計算します。累積比率の零点をずらします。

図9 データ収集とデータの並べ替え  ORIGINAL

手順2:パレート図を生成する複合グラフを選択する。
グラフにするデータを選択して、「挿入」よりグラフ⇒複合グラフを選択します。

図10パレート図を生成する複合グラフを選択  ORIGINAL

手順3:第2軸(累積比率)の設定。
累積比率の軸設定をします。

図11第2軸の設定  ORIGINAL

手順4:第1軸(不良項目)の設定。
不良項目数の軸設定をします。

図12第1軸の設定  ORIGINAL

手順5:不良項目の幅を最大限にする。
不良項目の棒グラフの幅を最大限にします。

図13不良項目の幅を最大限にする  ORIGINAL

手順6:累積比率グラフの開始点を零点に移動させる。
累積比率の折れ線グラフの開始点を零点に移動させます。

図14 累積比率グラフの開始点を不良零点に移動  ORIGINAL

手順7:項目幅を調整する。
第2項目の項目幅を、他の項目幅に合わせます。

図15 項目幅の調整  ORIGINAL

手順8:必要項目を記入して完成させる。
必要な項目を記入してパレート図を完成させます。

図16必要項目を記入して完成  ORIGINAL

 

参考文献
すぐに使えるQC手法   片山善三郎他  日科技連
よくわかる「QC7つ道具」の本   石川敏夫  日刊工業新聞社

引用図表
パレート肖像   Wikipedia
ジュラン肖像   Wikipedia
図1 改善前後の比較   ORIGINAL
表2 パレート図で縦軸・横軸に取り上げられる項目  出典:参考QC7つ道具で問題解決
表3 加工後に発見される鋳造不良   ORIGINAL
表4 パレート図作成のためのデータ計算表
表5 累積和、比率、累積比率の計算結果  ORIGINAL
図6 縦軸・横軸を描く  ORIGINAL
図7 棒グラフを描く  ORIGINAL
図8 パレート図の完成  ORIGINAL
図9 データ収集とデータの並べ替え  ORIGINAL
図10 パレート図を生成する複合グラフを選択  ORIGINAL
図11 第2軸の設定  ORIGINAL
図12 第1軸の設定  ORIGINAL
図13 不良項目の幅を最大限にする  ORIGINAL
図14 累積比率グラフの開始点を不良零点に移動  ORIGINAL
図15 項目幅の調整  ORIGINAL
図16 必要項目を記入して完成  ORIGINAL

ORG:2024/05/11