品質機能展開

品質機能展開(QFD:Quality Function Deployment)

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品質機能展開(QFD:Quality Function Deployment)

品質機能展開とは、お客様(顧客)の要望を的確に把握する方法で、顧客のニーズや期待を整理して、技術的にどのようにすれば、顧客を満足させることができるかを明確にする手法です。
品質機能展開によるアプローチは、製品企画から製造までのプロセスに一貫性を持たせて、顧客のニーズ及び期待を満足する製品設計の指針を与えます。また、これを実現する製品の構成要素、及び製造プロセスの望まれる結果を製品の企画・設計段階で明確にすることができます。
このアプローチは設計的アプローチであり、源流からのアプローチです。

 

 

1. 品質機能展開の基礎概念

品質機能展開で、基本となるのが、顧客ニーズを示した要求品質展開表と顧客ニーズを実現するための具体的な品質特性を示した品質特性展開表、さらにこれら二つを組み合わせて対応関係を示す品質表です(図1  )。

 

図1 品質機能展開の基本

 

品質機能展開は、英語では ”Quality Function Deployment” といい、その頭文字を取って「QFD」と呼ばれています。品質機能展開の概念は、1978年に玉川大学の赤尾洋二博士・水野滋博士により提案されました。1966年ブリヂストンでの適用が始まり、松下電工、三菱重工などでの適用により手法として洗練されていきました。
品質機能展開は海外でも、特に米国でシックスシグマの主要ツールとして、盛んに活用されています。

2. 品質機能展開の構成要素

品質機能展開を進めるために、要求品質展開表、品質特性展開表、および要求品質展開表と品質特性展開表との二元表である品質表などの諸表が作成されます。これらについて簡単に示します。

① 要求品質展開表

製品やサービスに対する顧客の要望や、要求事項、期待値を抽出し整理して、要求品質表にまとめます。抽象的な顧客の要求をグルーピングすることにより要求事項を集約・整理していく作業を通して、顧客要求を階層構造でまとめて、要求事項をより明確にする役割を持ち、開発インプットを可視化する表です。

② 品質特性展開表

顧客要求を実現するために必要な技術特性を整理するための表です。抽象的な顧客要求を、測定可能な単位を持つ品質特性により具体的に表にして展開します。つまり、顧客要求を工学的な尺度に変換する作業です。
品質特性展開でも、品質特性を階層構造で整理して共通項別にまとめることにより、要求品質との対比がより明確になります。

③ 品質表

品質表は、要求品質と品質特性との関係を可視化した二元表です。これはL型マトリックス図に相当します。
縦軸に要求品質をまとめた要求品質展開表、上側の横軸に顧客要求満足するために必要な技術特性をまとめた品質特性展開表を配置します。両者を対比させて相関の程度を◎、○、△などの記号で表示して、要求品質を実現するために必要な技術特性を明確にします。

これらを基本として、

④ 企画品質設定表や、⑤設計品質設定表、⑥品質特性関連表を加えて、構成されることもあります(図2)。

図2 広義の品質機能展開  参考:JIS Q9025:2003「マネジメントシステムのパフォーマンス改善⼀品質機能展開の指針」

品質機能展開を実施する手順を簡単に示します(図3:品質特性関連表は省略)

① ユーザーの要求を把握する。
② 原始データを要求項目に変換する。
③ 要求項目から要求品質に変換する。
④ 要求品質展開表を作成する。
⑤ 品質要素展開表を作成する。
⑥ 品質表を作成する。
⑦ 企画品質を設定する。
⑧ 要求品質重要度を品質要素重要度に変換する。
⑨ 設計品質を設定する。

図3 品質機能展開の手順  JIS Q9025:2003「マネジメントシステムのパフォーマンス改善⼀品質機能展開の指針」

さらに、これに基づいて作成された品質表の概念図を、図4 に示します。

図4 品質機能展開の概念図  参考:QFDガイドブック品質機能展開の原理とその応用

3. 品質機能展開の全体像

適合品質が当たり前品質として認識されるようにつれ、製品・サービスの開発において技術・コスト・信頼性の情報についても機能展開する重要性が認識される様になりました。そのため、技術展開、コスト展開、信頼性展開として品質機能展開に含まれるようになりました。
少し古い資料ですが、品質機能展開についての全体図を示します(図5 )。
「広義の品質機能展開 ⇒ 品質機能展開」、「狭義の品質機能展開 ⇒ 業務機能展開」、「品質特性分析 ⇒ 品質展開」、「生産技術分析 ⇒ 技術展開」、「コスト分析 ⇒ コスト展開」、「信頼性分析 ⇒ 信頼性展開」と読み替えてください。

図3 品質機能展開図   QFDガイドブック品質機能展開の原理とその応用

① 品質展開(quality deployment)

品質展開とは、「顧客のニーズを製品の品質特性(の仕様)に落とし込むこと」をいいます。
品質の定義は、顧客ニーズに合致した製品・サービスの提供を意味するので、その定義を忠実に実践することを意味します。
顧客のニーズを把握する原始情報は、主として顧客の声になりますが、往々にしてあいまいで捉えづらいものであることが多いです。それらの中から重要な情報を拾い出し、体系的に整理しておく必要があります。
また同時に、顧客のニーズを実現するために、製品の品質特性のどこをどのような仕様(スペック)にすべきかを特定する必要があります。
製品を設計することは、製品が最終的に持つべき品質特性に仕様を決めることです。このためのツールが品質表になります。

② 業務機能展開(狭義の品質機能展開)(job function deployment)

業務機能展開とは、「品質を形成する業務を、解析的に分析して明確化する方法」と定義されます。つまり、業務をその目的や手段ごとに分割して、それぞれをステップ別に細部に展開してその役割を明確にすることと考えることができます。
業務機能展開でいう、「業務機能」とは、製品の品質を実現するための機能や業務を意味しています。
ここで、「製品の品質を実現するための」という限定修飾語は、大きく考えると、企業体の組織内のあらゆる職能・業務が直接的、間接的に製品品質の実現に影響を与えていると考えることもできます。
この業務機能展開は、業務機能展開表や、保証項目展開表、品質保証活動一覧表、品質保証
体系図などにより構成されています。

③ 技術展開(engineering deployment)

自社の現有技術で、製品の設計品質(開発仕様)を達成することが実現可能か、自社保有技術を棚卸しして、自社技術の体系化と強み弱み分析を行います。その上で、現有自社技術で達成が困難であれば、ボトルネック技術(BNE; Bottole Neck engineering)が何であるかを明確にして、BNE(ボトルネック)を解消するために新たに開発すべき技術の抽出と検討とを行います。

④ コスト展開(cost deployment)

一般的に、広義の品質QCDのうち、Q:品質とC:コストとはトレードオフの関係にあり、両立するのは難しいといわれています。
製品を開発して販売するとき、目標売価は市場価格により決まります。優れた品質の製品を開発しても市場価格より高くては、売れません。しかし、企業活動である以上、一定の利益を出すことが企業経営上必須となります。つまり、

目標原価 = 市場価格 - 目標利益

の関係を満足する必要があります。
コスト展開とは、目標原価を部品の機能により配分して、原価低減について検討し、見積原価との比較からコスト上も問題点(BNE)を抽出する手法です。

⑤ 信頼性展開(rekiability deployment)

信頼性展開は、要求品質に対して起こり得る故障に着目して、保証すべき項目とそのレベルとを明確にするための手法です。
品質展開がポジティブな要求品質の展開の取組であるのに対して、信頼性展開はネガティブな故障などの予防に関して信頼性手法を用い、設計段階で故障を予防する取組です。
故障予防のための分析手法として、FTAとFMEAとがあります。

1) FTA(Fault Tree Analysis):故障の木解析
設備や機器の故障をトップ事象として、AND/OR の論理記号を用いて、発生原因を上位のレベルから順次下位のレベルに展開して、部品レベルまで落とし込んで、原因や発生確率を明らかにしていく手法です。

2) FMEA (Failure Mode and Effects Analysis)
製品の構成部品や要素ごとに考えられる故障モードを列挙して、その部品や要素で構成される設備や機器の機能に与える影響度を解析する手法です。
信頼性展開では、まず製品(同種のものを含む)で過去に発生したトラブル(過去トラ)をベースにして、要求品質に対するFTAを実施して、故障発生のメカニズムを樹形図で表した表をFT展開表とします。要求品質展開表とFT展開表との二元表から重要故障モードを抽出して、部品の品質特性との相関性について整理して、FMEA(D-FMEA)を実施して信頼性を検討すべき部品の抽出を行います。

なお、JIS Q 9025:2003「マネジメントシステムのパフォーマンス改善一品質機能展開の指針」に詳細が示されています。

 

参考資料
品質展開入門  赤尾洋二  日科技連1978年
QFDガイドブック品質機能展開の原理とその応用  大藤正他  日本規格協会1997年
JIS Q 9025:2003「マネジメントシステムのパフォーマンス改善一品質機能展開の指針」

引用図表
図1 品質機能展開の基本
図2 広義の品質機能展開  参考:JIS Q9025:2003「マネジメントシステムのパフォーマンス改善⼀品質機能展開の指針」
図3 品質機能展開の手順  JIS Q9025:2003「マネジメントシステムのパフォーマンス改善⼀品質機能展開の指針」
図4 品質機能展開の概念図  参考:QFDガイドブック品質機能展開の原理とその応用
図5 品質機能展開図   QFDガイドブック品質機能展開の原理とその応用

 

REV:2022/10/10
ORG:2022/10/09