トップ診断

トップ診断(top diagnostics)

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トップ診断
トップマネジメントは、方針管理および日常管理が現場でどのように運営管理されているかを評価するために、トップマネジメント自身がマネジメントシステムの診断を行う場合がある。
トップマネジメントが、現場のプロセスの責任者と、直接コミュニケーションを図りマネジメントシステムの運用状況を評価する活動を「トップ診断」という。

 

1. トップ診断とは

トップマネジメントは、方針管理および日常管理が現場でどのように運営管理されているかを評価するための方法として、トップマネジメント自身がマネジメントシステムの診断を行う場合があります。
多くの組織では、方針管理に基づく管理を継続して行っていますが、通常はトップマネジメントと各部門の責任者によるコミュニケーションが主体で、現場との関係は間接的になり、必ずしも緊密でない場合があります。このため、トップマネジメントが、現場のプロセスの責任者と、直接コミュニケーションを図る必要があります。このような活動を「トップ診断」といいます。

トップ診断の主目的は、組織を構成する人すべてに、組織の方針を浸透させ、参画意識を持たせることにあります。
また、トップマネジメントは、現地・現物や、三現主義(現場、現物および現実)、ゲン主義(三現主義+原理、原則)による診断を通じて、方針の達成度および方針達成のためのプロセスを、直接把握することが可能になります。

トップ診断は、一般的には次の手順で行います。.
ステップ1:診断計画を策定する。
ステップ2:診断チームを構成する。
ステップ3:被診断部門の責任者が、トップマネジメントに対して方針の展開、およびその結果について説明する。
ステップ4:トップマネジメントは、説明内容について現場で確認を行う。
ステップ5:トップマネジメントは、確認した結果に基づいて、被診断部門の能力を評価する。
ステップ6:トップマネジメントは、被診断部門に対して評価結果を説明し、その能力をどのように改善すべきかの提案を行う。
ステップ7:トップマネジメントは、マネジメントレビューで被診断部門の能力およびパフォーマンスの改善内容を確認する.

また、トップ診断のポイントは、以下の通りです。
① トップマネジメント自身が、現場に出向いて行う。
② 成果を含む、実施状況を評価する。
③ 改善の視点を、具体的に指示する。

 

2.トップ診断の目的

トップ診断の内容は、以下の3つに整理できるようです。
① 方針管理で掲げられた方針、課題の達成に向けての進捗状況のレビュー
② QCD(品質、コスト、納期・量)などの広義の品質についての重要課題のレビュー
③ 各部門の日常管理の実態状況の診断

① 方針管理の進捗状況のレビュー

方針管理の進捗状況のレビューは、それ自体方針管理の仕組みに組み込まれています。本来は、トップ自らが行う必要性はないとも言えますが、トップの方針が目標・方策に展開され、さらに実施計画に落とし込まれて、具体的に進捗していく状況を、トップ自身の思いを、どう実現しているかの視点から妥当であるかを確認することに意味があります。
このとき、総花的に行うのではなく、少数の事例やケースを取り上げて、具体的に検討した経緯の中間報告に基づいて行うのが通常です。

② 広義の品質についての重要課題のレビュー

広義の品質についての重要課題のレビューについても、機能別管理の枠組みで、特定課題についての進捗管理として実施されますので、トップが行う必要が無いと言えます。
しかし、①と同じですが、具体的事例を取り上げて、トップ自身が検討に参加することで、課題の認識は正しいか、方策は技術的・経済的にみて妥当か、活動の阻害要因は何か、テコ入れの必要はあるかなどについて検討し、明らかにされた課題を一般化することにより、個々の事例で得られた知見を一般化することができます。

③ 各部門の日常管理の実施状況の診断

各部門の日常管理の実施状況の診断こそが、本来のトップ診断という考え方もあります。
その典型的な方法は、課・グループ程度のあまり大きくない業務範囲を取り上げ、日常管理の実態をトップ自らが「診断」するというものです。
日常の仕事の進め方が、業務実施例に基づいて、原則通りできているか、業務についての管理項目の最近の水準を確認し、不十分な面や基準に達していない例を見つけて、その原因を明らかにしていくなどの手法がとられます。もちろんこのときに注意しなければならないのは、個人の責任に帰することはしてはならないことです。

 

[コラム]

トップ診断の始まり

日本の品質管理の発展過程において、トップ診断がいつどのように始められたかについて、興味深い逸話を書かれたものがありました。以下その概要です。
日本で、トップ診断がいつどのような形で始められたか、それには小松製作所(現コマツ)存亡の危機が関連しています。
昭和30年代終わり、貿易自由化、資本自由化など日本の開放経済体制への移行の過程で、建設機械は言ってみれば生贄としてこの厳しい政策の適用領域となりました。
当時、コマツは国内ブルドーザー市場の6割のシェアを確保していましたが、アメリカの巨大建設機械会社キャタピラが、日本に参入してくることになりました。三菱重工業と合弁した、三菱キャタピラです。
コマツは倒産すると、当時の誰もが思っていました。この危機を乗り切るため、コマツはTQC(総合的品質管理、全社的品質管理)を導入します。
キャタピラのブルドーザーをバラバラにして徹底研究し(ティアダウン:Tear down)、基本的には真似をして、自社製品の品質・信頼性の画期的向上を図りました。これを「マルA作戦」と呼び、最優先活動と位置づけて、死にもの狂いで頑張りました。その結果、国内シェア6割は死守し、昭和39年(1964年)にデミング賞実施賞を受賞します。
この品質管理推進を指導したのが、日本の近代の品質管理の父ともいえる石川馨先生です。初代経団連会長・石川一郎氏の長男、鹿島の石川六郎元社長・会長の長兄です。石川先生が関わりを持ったのは、当時のコマツの社長・河合良成氏の長男で、後に社長・会長になる河合良一氏が石川先生と東京高校(現・東大教養学部)の同窓であったからです。
河合良一氏は、当時品質担当の部長でした。石川先生は指導を引き受けるにあたり、同窓である河合良一氏に、自分が工場を訪問して組織的品質改善に取り組むすべての場面に同席するという条件をつけたのです。
河合良一氏は、この経験を通じて、品質管理という横串的部門の責任者として全社の現実をつぶさに見て、泥臭い実態の観察、考察から得られる知見がいかに重要かを理解し、自分がトップになったあともこの活動を続けました。

コマツはまた当時、「旗管理」という方針管理の萌芽的な手法を編みだしますが、それもあって、わが国の品質管理において、トップ診断が、方針管理に関わる方法論と位置づけられ、発展をしていくのです。

 

参考文献
基礎から学ぶQMSの本質 第36回 トップ診断  (2016-09-27) 
           https://www.tqm9000.com/news/2016/09/26/top-diagnosis/
品質管理技術の見える化 -トレーニングツール-  福丸典芳  日科技連

ORG:2022/12/20