4.1 5S

4.1 5S

1. 5Sとは

5Sとは、「整理:Seiri」、「整頓:Seiton」、「清掃:Seisou」、「清潔:Seiketsu」、「躾:Shitsuke」をいいます。それぞれの言葉のローマ字読みの頭文字のSをならべて、5Sといいます。

品質監査などで生産現場に出向くことがあります。一見片付いているように見えますが、機械の管理状態を示す点検記録表や、工程状態を確認するためにQC工程表の提示を求めると、なかなか出てきません。無いわけでは無いようです。

そうです。5Sの基本である、整理整頓のレベルでもなかなか難しいのが現場の実際です。5Sは職場の環境を整えるための美化活動ではありません。5Sを推し進める、5S活動はまさに、仕事におけるSQCDを高めるために行うものです。

5Sはどんな業種、どんな職場、どんな業務形態でも実践できる活動です。5Sは、TQMのためだけではなく、いろいろな場面でも、その会社の活動を支える基礎的な活動です。

2.5Sの意味

次に、5Sの個別的な意味について考えてみましょう。

(1)整理(Seiri)

「整理とは、要るものと要らないものとを明確に区別して要らないものを捨てる。」ことです。
整理は、ものを並べ直したり、積み直したりすることではありません。これは、整えて、並べ直す行為で、”整列”と呼ばれるものです。
「要るものと要らないものとを区別して不要なものを捨てる。」 このことが大変に難しいことです。まず、要るものと要らないものとの区別をつける。これが結構大変です。さらには、捨てるとなると大いに迷ってしまいます。
誰でも一目見て、不要なものわかるようにすることが大事です。整理ができていないと、不必要なものが多くなり、資金やスペースを無駄に使ってしまいます。

(2)整頓(Seiton)

「整頓とは、要るものを使いやすいようにきちんと置き、誰にでもわかる様に明示する。」ことです。
整頓は、整理とセットでよく使われますが、よく考えると正確な意味がわからない言葉です。整頓は見た目をきれいに並べることではありません。これは”陳列”と呼ばれます。整理することで、自分の仕事場で本当に必要なものだけが残ります。次に、必要なものを、誰でもすぐに取ったり置いたりできるようにすることが大切です。この意味で、整頓とはものの置き方の”標準化”といえます。
整頓ができていないと、例えば工具や必要な書類を探すのに時間がかかることです。仕事場で必要な書類、データが見つからないことは、整頓ができていないことの現れです。

(3)清掃(Seisou)


「清掃とは、常に掃除をし、きれいにする。」ことです。
清掃の行き届いている工場は、品質も良いといわれるほど、密接に関係します。まず、床面はほうきで掃き、機械は布で拭くことが基本です。また、ゴミや汚れの出ないような工夫も必要です。
清掃は、保全活動の日常点検と一体化させて、清掃点検も行うことが大切です。特に、機械や設備の調子は作業者が一番よく知っているので、日々点検清掃していれば、機械を布で拭くとき、少しの油漏れや異臭でも、日常とは異なることに気付きます。清掃は、機械設備の維持の基礎です。
また、事務所で机の上や周りをきれいにするのは、その清掃を通じて情報処理をしやすい環境を維持することです。

(4)清潔(Seiketsu)


「清潔とは、整理・整頓・清掃の3Sを維持する。」ことです。
清潔が、1項から3項までの3つとは少し異なるところがあります。整理・整頓・清掃の3つのSは、「~する」を付けると動作の状態をあらわすことです。一方、清潔という言葉は、それについて考えた時点、もしくは、整理・整頓・清掃の行為の結果を表しています。
清潔は、とくに清掃と深く関連しています。清掃とは、3項で述べたように、機械や設備が油やゴミで汚れないように掃除をすることです。清潔は、このきれいな状態を長く保持することといえます。
5Sの取組みとしては、より進んだ取組みとすべきで、汚れが出たから清掃して清潔さを維持する。との後ろ向きな考えではなく、「汚れない仕組みを組み込んだ清潔」へ改善すべきです。

(5)躾(Shitsuke)


「躾とは、決められたことを、いつも正しく守る習慣づけ」のことです。
朝夕の挨拶、作業服の正しい着用、名札、ヘルメットなどの保護具の着用など、ものづくりの現場での決まりを守ることにより、安全、清潔、働きがいなどを高めていくことが大切です。これらが自然に守られる職場は、4S(整理・整頓・清掃・清潔)を徹底することができ、生産性も上昇し、品質も良好です。
躾は、人の意識の改革を促すものですので、5Sの中でも核となります。他の4Sは、最後の”躾”が伴っていなければ維持することはできないし、ものづくりの要となる取組みで、躾ができていなければ、企業にさらなる発展も望めません。
躾づくりを支えるには、次の5つの方策があります。
1)見える化:正常な状況か異常な状況かを、誰が見ても、一目でわかるようにするための管理手法で「目で見る5S」ともいわれます。
2)叱る:現場管理者が5Sに対して、厳しい態度で臨む必要があります。床面にねじ1本落ちていても、誰も拾わない職場では、監督者に対して、愛情をもってしかも厳しく「叱る」ことが大切です。ものづくりの現場を育て、能力を最大限に引き出す”叱り手”と”叱り方”を追求することが重要です。
3)躾をつくる15の教え:躾を習慣化するルール。叱る行為をする際の基準となります。
4)全社的な取組み:トップ自ら率先して指導しなければなりません。
5)5S推進ツール:躾づくりの道具、全社員の意識向上を促します。

図4.1.1 5Sの概念

3.5Sの効果


5Sを徹底的に実践すると、以下に示すような効果があります。

効果1:不良ゼロ:品質の向上

・品質を保証する検査設備や測定機器の正しい使用方法、保管状態は、不良ゼロの大前提です。
・整理・整頓による定位置化により、治具・工具の使用間違いが無くなります。
・部品の識別を明確にして、定位置化し、正しい手順で取出すことで部品も組付け間違いはありません。
・清掃ができていない汚い職場では不良を出しても目立ちません。

効果2:災害ゼロ:安全第一

・作業環境が良ければ、作業がはかどります。
・安全性を考慮した物の置き方をして、荷崩れ防止で、災害を起こさないで済みます。
・火事や地震など不慮の事故でも消火器や避難通路が明確になっていれば、生産活動への支障は最小限になります。

効果3:故障ゼロ:保全性の向上

・日常の手入れと点検で故障を未然に防ぐ、予防保全を行いましょう。
・機械の掃除をしながら日々の保全業務を兼ねることで稼働率が向上します。
・ゴミやヨゴレ、それにホコリは機械設備の大敵、寿命を著しく縮めます。定期清掃で寿命アップをはかりましょう。
・切粉、切りくず、油漏れなどを無くし、ピカピカになるくらい拭くくらい、機械設備に接することで、機械の調子がわかるようになります。

効果4:在庫ゼロ:問題の顕在化

・仕掛り在庫、倉庫在庫の持ち過ぎは、ムダを隠蔽(いんぺい)します。
・倉庫、棚、キャビネットの置き場所がれば、ついついなおしてしまい在庫のムダを生みやすいです。
・パレット、台車、フォークリフトがあれば、モノの移動のムダを生み出します。

効果5:切替えゼロ:多品種生産対応

・金型の整理・整頓で、シングル段取りを行い、多品種生産に対応できるようになります。

効果6:ムダゼロ:コスト削減

・「探す」、「よける」、「避ける」を無くして、ムダな動きを排除しましょう。
・不要な設備の廃棄を速やかにして、ムダ無しさんの圧縮、スペースの確保をはかりましょう。
・金具、治具、工具の整頓で、探すムダを無くせます。

効果7:停滞ゼロ:納期厳守

・現在の作業に必要なもの以外は出さず(整理)に、仕事の単位で部品を整頓し、納期を表示(見える化)して順番に並べ、加工や組立・検査することで、納期をまもることがでるようになります。


4.5Sは改善の基本


5Sの取組みは、改善の基本となるものです。その具体的な手順は、
(1)ムダを見つけ出して、その見つけたムダを除去すること。
(2)効率よく仕事ができるように、仕事の段取りの仕組みをつくること。
(3)職場環境を見える化して、誰でも異常を見つけることができること。
(4)改善のPDCAのサイクルを繰り返し回して、継続的に改善を進めること。
(5)各職場での各階層への、教育・指導を進めるとともに、決められたことを常に見直して改善すること。
です。
5S活動は、改善活動の出発点であり、永遠に先に進むべき終着点への道筋です。

5.業務の見直しにも5Sを進めよう

5S活動は、工場サイドでものを扱う製造職場だけが、対象のように考える人もいますが、倉庫などの物流部門や事務所などの間接部門など、企業のあらゆる部門を対象として活動を進めていく必要があります。
まずは、物を対象とした5S活動を進めて、軌道に乗ったら、他の部門にも順次5S活動を進めるようにしてください。

これは直接ものづくりに携わっていない職場の皆さんにお願いです。あなたが今している業務で、ムダな帳票づくりや、やたらサインやハンコが多い書類はありませんか?ぜひ、節目節目には、業務の棚卸を5Sの間接から見直すことをお勧めします。


参考文献
ジャスト・イン・タイム生産の実際  平野裕之  日経文庫
TPM品質管理入門 山田秀  日経文庫
図解・よくわかるこれからのTPM  山田正美  同文館出版
図解 5S・JIT基本用語555   平野裕之   日刊工業新聞社
トコトンやさしい5Sの本  平野裕之・古谷誠   日刊工業新聞社
https://www.consultsourcing.jp/1089 コンサルソーシング株式会社HP

引用図表
図4.1.1 5Sの概念     ORIGNAL

ORG:2017/9/17