4.3.3 ヒストグラム

4.3.3 ヒストグラム(histogram)

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1.ヒストグラムとは

ヒストグラムとは、製品製作時に得られた多くのデータがどのような分布をしているかを、棒グラフの形で見やすく整理した図です。その形状から柱状図ともいいます。

図4.3.3.1 ヒストグラムの例    Statistical Quality Control

我々は、日頃より品質が優れたものをつくるために、日々努力しています。しかし、材料のばらつきや、製作時の雰囲気のばらつきにより、どんなに自動化された工程でものづくりをしても、製作された製品の品質、すなわち品質の特性値には、ばらつきを生じます。
品質特性として得られる、例えば長さや、質量、温度、時間などの計量値は、ある値が最も多く得られ、それを中心としてその値から離れるに従ってその割合が減少するのが普通です。これを品質の集団が分布を持っているといいます。

 

2.ヒストグラムの特徴

ヒストグラムは長さや質量などの計量値がどんな分布をしているか、全体の姿が一目でわかるのが特徴です。しかも、おおよその平均やばらつきの程度がわかります。

ものづくりの現場では、製品が規格寸法内に収まっていることは当然の要求事項になりますが、そのためには製品のばらつきがどれだけに抑えられているかがポイントになります。ヒストグラムは、その製品のばらつきや分布状態がいち早く、直感的に可視化できます。

 

3.ヒストグラムの見方

ヒストグラムは、データが持つ集団としての情報を得るために作成します。ヒストグラムを見る場合、多少の凹凸は無視して全体の分布(形状)に着目します。見方のポイントは、柱状図の形や分布状態、中心値の傾向、ばらつきの大きさ、規格公差に対する外れの有無などを見ます。

ヒストグラムにはいろいろな形があります(図4.3.3.2)。ここでは代表的な形のものについて説明します。

図4.3.3.2 ヒストグラムの形

(1)一般型

工程に異常が無く安定して入れば、計量値データでは一番普通に現れる形です。度数は中心付近で最も多く、中心から離れるに従って徐々に少なくなり、ほぼ左右対称になります。公差中央を狙って工作した場合によく見られます。

(2)歯抜け型、くし歯型

区間の一つおきに度数が増減し、歯抜けやくしの歯の形になっているのが特徴です。ヒストグラムがこのような分布になった場合、区間の幅が測定の刻みの整数倍になっているか、測定者の目盛の読みに誤りやクセが無いかを調べることが必要です。

(3)右スソ引き型

規格値などで下限が抑えられている場合や、理論的にある値以下にならない場合に、この分布を取ります。例えば、「不純物の成分が0%に近い。」や「不良品数や欠点数が0に近い。」場合などが該当します。また、機械部品で穴加工をする場合、削りすぎると不良になるので、公差の下限値を狙って加工する作業者が多く、その場合右スソ引き型分布になりやすくなります。

(4)左スソ引き型

右スソ引き型とは逆になります。規格値などで上限が抑えられている場合や、収率など理論的にもある値以下にはならない場合に、この分布を取ります。例えば、「純度が100%に近い。」や「歩留まりが100%に近い。」場合などが該当します。また、機械部品で丸棒を切削する場合、削りすぎると不良品になるので、公差の上限値を狙って加工する作業者が多く、その場合に左スソ引き型になりやすくなります。

(5)絶縁型

工程能力が不足しているのに、規格があるために全数検査をして不良品を除外している場合などによく現れる分布です。測定誤差や、測定値のごまかし、検査ミスなどが無いか確かめておく必要があります。

(6)ふた山型

平均値が異なる2つの分布が混じり合った場合に現れる分布です。例えば同一部品を2台の機械で加工する場合や、2種類の原料間に差異がある場合などに、それらのデータを一緒にしてヒストグラムを作成した場合によく現れます。
この場合は、元のデータを、機械ごとや原料別に層別して、別々のヒストグラムを作成すると良いです。

(7)高原型

平均値が少しづつ異なるデータを一緒のヒストグラムにした場合によく現れる分布です。この形のヒストグラムが得られた場合、ふた山型と同様に、要因別に層別してヒストグラムを作り直すと問題点が見えてくることが多いです。

(8)離れ小島型

異なった分布のデータがわずかに混入した場合や、工程に突発的な異常が発生した場合などに現れる分布です。データの履歴を確認して、工程に異常が無かったかや、測定ミスはないか、他工程のデータが混入していないかなどを調べる必要があります。

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4.ヒストグラムの作り方

ヒストグラムは、データが存在する範囲をいくつかの区間に分割して、各区間に入るデータの出現度数を数えて、度数表を作成します。これを柱状図にしたものがヒストグラムです。

エクセルでは、分析ツールの中にヒストグラムの項目があり、簡単に作成できます。ここでは、ヒストグラムの作り方が理解しやすいように分析ツールを使わないでエクセルの表計算機能だけで求めるように手順を分解して示します。

手順1 データを集める

ヒストグラムを作成する場合、必要なデータ数は50個から200個くらいです。データ数が少ないと、集団としての性質を把握するのが難しくなります。一方多すぎると作成の手間が増えます(エクセルなどの表計算シフトを用いれば作業は軽減されます)。
ここでは、チェック弁に使用するばねについて納入品からランダムに60個サンプリングして、ばね定数のばらつきをばね試験機で測定した結果を表4.3.3.3に示します。

表4.3.3.3 ばね定数の例題

手順2 データの最大値と最小値とを求める

エクセル関数で、MAX,MINにより、最大値と最小値とを求めます。
ここでは、MAX:22.33N/mm,MIN:21.00N/mm になります。

手順3 区間の数を決める

ヒストグラムの柱の数を区間の数といい、kで表します。kの値はデータ数の平方根を四捨五入して整数値に丸めた値にします。

k(区間の数)= √(データ数)= √(60)=7.75… → 8

ここでは、区間の数は、8 とします。ただし、手順4で計算する区間の幅により増減する場合があります。

手順4 区間の幅を決める

次に区間の幅hを決めます。区間の幅の求め方はデータの最大値から最小値を引いた値を、手順3 で求めた区間の数kで割ることにより求めます。得られた数値を、測定位置の刻みが測定単位の整数倍になるように四捨五入して丸めて区間の幅とします。
例題では、

h(区間の幅)= (最大値 – 最小値)/ 区間の数
       = (22.33 – 21.00)/ 8
       = 0.16625 → 0.20

のように、得られた0.16625に対して、測定値の刻み0.01 N/mm を考慮すると、0.15もしくは0.20 になります。ここでは0.20を区間の幅とします。

手順5 区間の境界値を決める

区間の境界値は、測定値の刻みの2分の1のところに来るように決めます。
まず、第1区間の下側境界値を求めます。

第1区間の下側境界値 = 測定データの最小値 – 測定値の刻み/2
           = 21.00 – 0.01/2
           = 20.995

次に第1区間の上側境界値を求めます。

第1区間の上側境界値 = 第1区間の下側境界値 + 区間の幅
           = 20.995 + 0.20
           = 21.195

になります。
以下、第2区間、第3区間とそれぞれ区間の幅を順次加えて求めたものを、表4.3.3.4 に示します。
手順3では区間の数をk=8 にするつもりでしたが、結果としてk=7 になりました。このように、区間の数は仮に決めた値より増減することがあります。

表4.3.3.4 度数分布表

手順6 区間の中心値を決める

区間の中心値は、その区間の下側境界値と上側境界値の和を2で割って求めます。
第1区間の中心値は、

区間の中心値 = (区間の下側境界値 + 区間の上側境界値)/ 2

第1区間の中心値 = (20.995 + 21.195)/ 2
         = 21.095

となります。
以下、同様に中心値を計算したものも、表4.3.3.4 に示します。

手順7 データの度数を数える

各区間に入るデータの度数を数えます。手動で数えるときは、データが度の区間に入るかを見ながら度数欄にマーキングしていきます。ここまで記入した表4.3.3.4 を度数表といいます。
全データについて、マーキングし終わったら、その合計がデータ数と合致することを確認します。

手順8 ヒストグラムを作図する

グラフ用紙の横軸にデータの目盛り、縦軸には度数を目盛ります。できればヒストグラムはほぼ正方形になるようにすると、図が見やすくなります(図4.3.3.5)。
横軸の目盛の付け方は、区間の中心値を目盛る補法を用いています。なお、左縦軸と第1区間の下限境界値の間は少し開けておきます。
次に、度数を棒の高さで表します。規格値や目標値が与えられていれば、図に記入します。

図4.3.3.5 ヒストグラム

手順9 必要事項を記入する

最後に、必要事項の記入です。図の余白に、データ数やデータの履歴(製品名、工程名、規格、データ採取期間、作成者名など)を記入します。

 

5.ヒストグラムの活用の仕方

度数分布を調査して、ヒストグラムを描く方法を一般的には度数分布法といいますが、記述統計の代表的な方法です。
ヒストグラムは、単独で使われるだけでなく、例えば、管理図を用いて工程管理を行うための予備的な調査のために、平均やばらつきの程度を直感的に理解するのに用いたり、あるいは、規格値と比較して不良品をチェックするなど、一種の工程解析に用いられます。

 

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参考文献
すぐに使えるQC手法    片山善三郎他   日科技連出版社
品質管理の基礎実務    武田正一郎   技術評論社
第3版 品質管理入門    石川馨   日科技連出版社
Statistial Quality Control  M.Jeya Chandra  2001 CRC Press LLC

 

引用図表
図4.3.3.1 ヒストグラムの例    Statistical Quality Control
図4.3.3.2 ヒストグラムの形    参考:すぐ使えるQC手法
表4.3.3.3 ばね定数の例題     ORG
表4.3.3.4 度数分布表    ORG
図4.3.3.5 ヒストグラム   ORG

 

ORG:2021/02/14