4.3.4 管理図

4.3.4 管理図(control chart)

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1. 管理図とは

1.1 ばらつきの種類

ものづくりの現場では、同じ材料で同じ設備、同じ作業手順(標準作業)を行っても、出来上がった製品の品質特性(品質を示す性質、例えば外観寸法、成分、寿命など)を示す値、すなわち品質特性値はわずかに変動します。この変動がある状態を「ばらつきがある」といいます。

品質特性値にばらつきがあることは、ものづくりの工程にばらつきを生じる原因があるといえます。このばらつきの原因は以下の2つに分類することができます。

(1) 偶然原因によるばらつき
同じ手順で、同じ製品を製作する場合でも、その品質特性値はばらつきがあります。原材料や作業方法を標準に基づいて同じ条件に設定してもばらつきが生じます。このばらつきをなくすことはできません。やむを得ないばらつきです。

(2) 異常原因によるばらつき
製作工程に、通常とは異なることが発生して起こる、見逃せないばらつきです。標準作業通りできていない、設備が正常に作動していないなどが原因となって発生するばらつきです。このばらつきは無くす必要があります。

1.2 工程管理

工程を管理するということは、異常原因によるばらつきを無くして、偶然原因によるばらつきのみの状態にすることです。管理図はそのためのツールです。管理図を正しく運用すると、今起こっているばらつきが偶然原因によるものか、異常原因で起こっているものかを判断することができます。ばらつきが異常原因によるものと判断されたら、速やかにその原因を発見して取り除く必要があります。

1.3 管理図とは

あらためて、管理図を定義しましょう。管理図とは、工程の過去の状況を評価するものさしとして、現状の状態がいつもと同じ程度のばらつきの範囲内(安定状態)にあるか、あるいはその範囲を超えていつもとは違う状態(異常状態)かを、客観的に判断する管理のためのツールです。

アメリカのシューハート博士(Dr. W. A. Shewhart)が1926年に初めて管理図という名称を付けて用いられるようになりました。日本には、第二次世界大戦後デミング博士により紹介され、日本の品質管理活動に多大な影響を与えました。

管理図には、対象となる工程の過去の状況から求められた管理限界を示す一対の線が引かれています(図4.3.4.1)。実線で示しされたものは中心線(CL; center line)、それをはさんで上下対称に破線で示されたものを管理限界線といいます。上側の線を上部管理限界または上方管理限界(UCL)といいます。また、下側の線は株管理限界または下方管理限界(LCL)といいます。

図4.3.4.1 管理図,R管理図

この図に、管理図が対象とする品質特性の測定結果をプロットしていきます。これらの点が管理限界線の内側にあるか外側に出てしまっているかで、製造工程が良好な状態であるか否かを判定します。

工程が安定であれば、偶然原因によるばらつきだけであるので、プロットされた点は管理限界線の内側に入っています。もし工程に異常が生じたら、プロットされた点は管理限界線の外側に出てしまうか、点の並び方に特徴的な並びが認められます。

図4.3.4.1 では、管理図で11日のところの点が、R 管理図では23日のところの点が管理限界線の外側に出ています。これらは工程に異常があったことを示しています。直ちにその原因を調査して対策する必要があります。

1.4 管理限界の意味

1.3 でみたように、管理限界線は偶然原因と異常原因とを判別するために管理図に引かれた線です。この管理限界は以下に示すような意味があります。

(1) 比較的安定した状態で、工程のデータを一定期間取得して、その工程の偶然原因によるばらつきの大きさを把握します。

(2) 偶然原因でデータがばらつく範囲を、”(平均値) ± 3 × (標準偏差)” とします。一般に標準偏差をシグマ(σ)と表しますので、このばらつき範囲を”3シグマ”といいます。

(3) 管理限界線を、3シグマの幅で引きます。

(4) プロットされた点が、管理限界線の間に入っていれば偶然原因によるばらつき、管理限界線の外側にあれば異常原因によるばらつきと判断します。

2. 管理図の種類

管理図には、プロットするデータの特性によって、いろいろな種類があります。
工程を管理する場合、まず最初に管理するものは何か、どんな品質を管理するのかを決める必要があります。

表4.3.4.2 にデータの種類と対応する代表的な管理図を示します。

表4.3.4.2 データの種類と代表的な管理図

2.1 計量値の管理図

長さや質量、時間、硬さなどの品質は連続的に変化するデータとして得られます。これらのデータは計量値(variable)といいます。
計量値に対しては、平均値() と範囲(R )との組み合わせによる、管理図がよく使われます。このほか、測定できるデータ数が少ない場合は個々のデータ(x )とその移動範囲(Rs )との組み合わせによる x-Rs 管理図がよく使われます。

2.2 計数値の管理図

不良個数や欠点数、不良率などのように、測定値が不連続(離散的といいます)な値を計数値(attribute)といいます。
計数値に対する管理図として、p 管理図があります。p 管理図は不良率の管理図です。例えば、工程で製作した製品100個のうち3個不良があった場合の不良率は3%になります。このような不良率を時系列にプロットして異常を見つけようとするのがp 管理図です。p 管理図では不良率を計算するときのサンプル数(分母)によって管理限界が変化します。pn 管理図は不良個数の管理図です。pn 管理図はサンプルの大きさが常に一定の場合に使われます。c 管理図は欠点数の管理図です。例えば冷蔵庫のドアパネルの傷の数を管理する場合に使われます。1台の冷蔵庫のパネルに傷がいくつあるかのように、一定単位の中にある欠点数を管理するための管理図です。

2.3 管理図

機械系の工場の現場でもっともよく使われているのがxbar-R管理図です。本項では、xbar-R管理図の作り方を、ボルトの首下長さのばらつきを例として考えていきましょう。

(1) データを収集する。
データは一般的には100個以上集めます。管理限界線を引くのに使用します。できるだけ直近で履歴がはっきりしているデータを集めます。

(2) データを層別する。
収集したデータを測定時間順(例えば製造日ごと)、ロット順、できれば工程別に層別して並べます。ここでは、毎時5個測定したボルトの首下長さを時系列に25組測定したデータ、合計125個のデータを収集します。

(3) データを群(subgroup)に分ける
1) 群とは、収集したデータを測定時間ごととかロットごととかいう風に、あるまとまりで分けるときに、これらの分けられたひとまとまりのデータのことを言います。また、群に分けることを群分けと呼びます。また、群のことを管理図ではサンプル・試料(sample)とも言います。
ここでは毎時5個の測定データを一つの群とし、25組に群分けします。

一つの群に含まれるデータの数を群の大きさ、サンプルの大きさ(sample size)といい、通常nで表します。また、群分けしてできた群の数を、群の数(number of samples)といい、通常はkで表します。

2) 群への分け方(subgrouping)は、層別方法と同様に管理図を生かす重要な要因です。多くの場合、1日のデータ、1交代、1ロットごとのデータなど、群の中でばらつきが小さくなるように、群分けをするようにします。この例では1時間ごとに5個測定しているので、群はn=5になります。群の大きさnは、各群とも同じ大きさにするのが原則です。

群分けの際に、技術的に意味があるようにするのが原則ですが、意味付けが難しいと感じたら、単純に時間順、測定順で群分けしてもよいと考えます。実際には、技術的に考えながらいろいろと群分けを試みて、管理しやすいものを見つけるようにします。管理図は1回作ってしまえば終わりであとは数値を書き加えるだけではありません。工程の安定状態を監視できる群分けを常に考える必要がありますし、群分けを変更しなくても、管理限界は定期的に見直す必要があります。

3) 群の大きさnは、通常n=2~5 の範囲にとられます。

(4) データシートへの記入
データは、あらかじめ(1)~(3)の手順を考慮して作成したデータシートに記入します。データシートの様式はPC上でエクセルなどの表計算ソフトを用いてあらかじめ作成したものに記入するのが便利です。表4.3.4.3 に、ボルト首下長さの測定結果を毎時5個づつ25組測定した結果を記入したデータシートを示します。

表4.3.4.3 ボルト首下長さの測定結果

(5) 平均値 の計算
群ごとの平均値を求めます。

例えば第1群であれば


 = 65.166

になります。

(5)総平均の計算

結果は測定値の桁数から2桁下まで求めます。本例では、

となります。

(6) 範囲の計算

群ごとに範囲Rを求めます。Rは群内のばらつきを表しています。

例えば、第1の群では

(7) 範囲の平均値の計算

本例では、

(8) 管理限界線の計算

a) 管理図

中心線:   
上部管理限界線:  
下部管理限界線:  

本例では、

CL= 65.114
UCL= 65.317
LCL= 64.910

b) R 管理図

中心線:   
上部管理限界線:  
下部管理限界線:  LCL= 考えない (nが6より小さいときは考えない)

本例では、

CL= 0.353
UCL= 0.746

A2、D4は、nにより決まる係数です。 表4.3.4.4 に示します。

表4.3.4.4 管理限界線計算用係数値

(9)管理図の作成

管理図については、専用の様式を作成するのが望ましいですが、ここではグラフ用紙を作成する方法を記します。

まず、方眼紙を用意します。
・左側に管理図と R 管理図との目盛を縦軸に取ります。管理図は上方に、R 管理図は下方に並べて書きます。

・下側に横軸を取ります。横軸には月日(および測定時間)、または群番号を記入します。

・目盛は、見やすさを考えて、適当な幅になるように取ってください。なお、中心線(CL)は実線、管理限界線(UCL,LCL)は破線で横軸と平行に記入します。

・管理図をより使いやすくするために、中心線と上方(下方)管理限界線との間をそれぞれ3つの領域(σに相当)に分割して、記号1σ、2σの位置に点線で横軸と平行に示します。

(10)管理図を記入

R の値をプロットしていきます。は●点で、R は×印で順次プロットして、それぞれ実線でつなぎます。プロットした点が管理限界線の外に出た場合は、その点に〇印を加えて目立つようにしておきます。もし、管理限界線上にのる場合は、管理限界外に出ているものとみなします(図4.3.4.5)。

(11)管理図への必要事項の記入

管理図の左上に群の大きさ、nを記入します。本例の場合はn=5と記入します。管理線にそれぞれの値を記入します。
そのほか、データの取得間隔、測定者、測定器具などの、工程管理に必要な事項を記入します。

図4.3.4.5 xbar-R管理図の作成例

 

3. 管理図の見方

管理図の異常の判断とする点の動きについては、JIS Z9021 シューハート管理図に「8つの異常判定基準」が示されています。これの説明は後述するとして、一般的な見方について示します。

(1) 点が中心線のまわりにばらついて、プロットした点が管理限界線から外れたり、点の並び方に癖がない状態を、「工程が管理状態」にある、または「安定状態」にあるとよんでいます。

(2) プロットした点が、管理限界線の外に出た場合、または管理限界線上にきた場合、この状態を「管理はずれ」とよんで、工程に異常があると判断します。これは、管理図の点をプロットすることにより、工程異常が直ちに判断することができます。

(3) JIS Z9021 シューハート管理図に記載の「8つの異常判定基準」を図4.3.4.6 に示します。この基準はアメリカのWestern Electric 社に所属していたNelson博士により発表されたものを基準としています。

これらのルール全てを適用するのは、問題を複雑にして、本来の工程異常の発見に間違った見解を与える場合があるといわれています。実際、管理者も品質管理を担当していた際に製造から相談を受けて、安定した工程であればルール1のみ考慮すればよいのではと答えた記憶があります。

図4.3.4.6 8つの異常判定基準

このルールの使い方については、いずれ項を改めて検討したいと考えます。

下記に示す、仁科博士の著作である、下記の書籍をご覧になればこれらの議論について詳細な考察が得られます。

仁科 健 著 「統計的工程管理」

4.管理限界の再計算

管理図は、長期にわたって使用して工程の安定性を確保するのが前提です。その場合、管理限界については工程に変化が認められない場合でも定期的に見直して、管理限界線を引きなおす必要があります。
一般的に、次のような場合には管理限界を計算しなおす必要があります。

(1) 技術的に考えて、工程に明らかな変化があった場合
管理図で管理している品質特性について、特性要因図を作成して、その要因に明確な変化が認められる場合、品質特性に影響を与えるものでなければ管理限界を計算し直します。

(2) 管理図に異常が現れて、工程が変化したことがはっきりした場合
   工程平均やばらつきが変化したり、前述の「8つの異常判定基準」で、ルール1以外の異常が頻度よく発生する場合、まず工程が変化した原因を明確にして、品質特性に影響を与えるものでなければ管理限界を計算し直します。

(3) 工程に変化がなくても管理限界を計算してから一定期間経過した場合
これは、前述の定期的な見直しを意味します。頻度は工程ごとに、例えば1か月ごと、半年ごと、10 000個製作ごとなど、品質特性の重要度をかんがみて決めるようにします。

再計算する場合に、計算用のデータに管理限界線より外側のデータがある場合の処置は、以下のようにします。

(1) 異常を示すデータについて、その原因がわかって、是正処置が取れそれが有効な場合は、そのデータを除外して、管理限界を再計算します。

(2)異常を示すデータについて、異常の原因がわからなかったり、あるいは有効な処置が取れない場合、そのデータも含めて管理限界を再計算します。

 

 

参考文献
すぐに使えるQC手法    日科技連
現場QC読本 管理図の作り方   日科技連
よくわかる「QC七つ道具」の本  石井敏夫   日刊工業新聞社
JIS Z9021 シューハート管理図

図4.3.4.1 xbar管理図,R管理図    すぐに使えるQC手法改
表4.3.4.2 データの種類と代表的な管理図    よくわかる「QC七つ道具」の本
表4.3.4.3 ボルト首下長さの測定結果   ORIGINAL
表4.3.4.4 管理限界線計算用係数値    現場QC読本 管理図の作り方
図4.3.4.5 xbar-R管理図の作成例    ORIGINAL
図4.3.4.6 8つの異常判定基準     JIS Z9021

ORG: 2019/10/12