4.3.1 パレート図

4.3.1 パレート図(Pareto diagram)

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1.パレート図とは

パレート図のパレートとはイタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートのことで、1897年に所得の大きさと所得者数との関係を統計解析により一般化して、所得曲線に関する法則(パレートの法則)を発表しました。この法則は、2割の高額所得者のもとに社会全体の8割の富が集中し、残りの2割の富が8割の低所得者に配分されるというものです。

パレートの法則は経済以外にも自然現象や社会現象など、さまざまな事例に当て嵌められるといわれています。自然現象や社会現象は決して平均的ではなく、ばらつきや偏りが存在し、それを集約すると一部が全体に大きな影響を持っていることが多い、という普通に観察される現象を示しています。

これを品質管理の分野に適用したのは、米国の経営コンサルタントのジュラン博士です。横軸に不具合原因や不適合項目を大きさの順に並べて、縦軸に不適合品数や損失金額の累積比率(%)をとったグラフにより、不適合品数や損失金額の大部分は、わずかの不適合項目により占められていることを示しました。これをパレート図と名付けたのがはじまりです。

パレート図は、不具合原因の不均等度に注目して、多数あるけれども軽微な損失の項目より、少数で問題となる重大項目を選択して、これを除去することの重要さを示しています。
TQM では、重点志向が重要な行動指針になりますが、これを助けるツールとしてパレート図は有効です。

2.パレート図作成手順

パレート図の一般的な作成手順を示します。

(1)不適合項目別など、層別するデータ項目を決定します。

(2)データを集めて整理し、データ数の大きい順番に項目を並べます。”その他” の項目は一番最後に置きます。

(3)項目ごとに該当するデータ数を入れ、数値の大きい項目から加算して累積数を求めます。

(4)データ数及び累積数の百分率を計算します。

(5)方眼紙などを用いて、横軸に不具合項目、左側の縦軸にデータ数の棒グラフの目盛、右側の縦軸に累積百分率の目盛をとります。それぞれの数値をグラフに書き入れます。

(6)必要項目を記入します。

3.パレート図を作成するうえでの注意点

(1)不適合品の数のデータと損失金額のデータの両方でパレート図を作成することが重要です。何を重点対策項目に取り上げるか検討することが出来ます。

(2)”その他” の項目は、常に最後の項目とします。

(3)改善前と改善後のパレート図は、縦軸の目盛を同じにして効果の比較が明確にできるようにします。

4.パレート図を使用することの利点

パレート図を作成は以下の情報を得るのに適しています。

(1)どの項目が一番問題なのかがわかります。

(2)取り上げる順序

(3)各項目の割合

(4)改善効果、不適合内容の変化

また、総じて以下の利点があり、何に重点を置くか、何から手を付けるか、ターゲットを絞るのに良い方法です。

(1)改善目標、重点対策項目を把握して、効果的な改善活動が進められる。

(2)改善前後の比較をすることにより、改善効果を客観的に評価することが可能。

(3)不適合品の発生や故障の原因を究明するのに役立つ。

(4)間接部門の業務改善など、すべての部門で活用できる手法である。

 

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5.パレート図を活用するにあたっての留意点

(1)項目ごとの大きさや順序は、どの項目をどれだけ変化させたら効果はどれくらいになるかなど、できるだけ多くの情報を得るようにすると良い。

(2)改善の手段と結びつく現象別だけではなく、原因別のパレート図も作成すると良い。

(3)経営的に真の問題を見失わないために、縦軸は出来るだけ金額で表すと良い。

(4)分類方法を変えることにより、いろいろな角度から不具合を検討すること。

(5)”その他” の項目が多すぎる場合、層別や分類方法を再検討する。

(6)重点項目を見つけて、期待される効果の予測には累積曲線を見ると良い。

(7)改善前後の比較のために、縦軸の目盛を合わせるのが良い。

(8)順位が低い項目でも、費用がかからず手の打ちやすい項目については、すぐに取り掛かるのが良い。

(9)パレート図の作図は、出来上がりがほぼ正方形になるようにすると良い。

(10)結果を報告する場合や、解析結果を検討する際に役立つように、履歴などの必要事項を記録しておくこと。

 

6.パレート図の作成例

本項では、パレート図を実際に製作してみます。本当はエクセルの手順を示さなければいけないのですが、直感的に作ってしまったのでうまく説明できません。
描き方は、「エクセルでパレート図を描く」でググってください。

(1)製品の不具合について、現象別に分類します。
1か月分の不具合について、現象別に件数と損失金額とで分類しました(表4.3.1.1)。
件数別についても損失金額べつについても大きい順に並べ替えています。

表4.3.1.1 製品不良の現象別の件数と損失金額

 

(2)表4.3.1.1から、パレート図を描くと図4.3.1.2になります。
一般に件数と損失金額とは順序が異なります。どちらの基準に基づいて潰し込みをするかは、その製品を担当する職場により変わりますが、全社的には損失金額の大きいものから潰し込みをするのが普通です。

図4.3.1.2 製品不良の現象別の件数と損失金額についてのパレート図

 

(3)改善効果を把握するために、改善前後の現象別の件数を調査したものを示します(表4.3.1.3)。

表4.3.1.3 製品不良の現象別の件数と損失金額

 

(4)表4.3.1.3から、パレート図を描くと図4.3.1.4になります。
改善効果がわかるように、縦軸の目盛の大きさはできるだけ合わせたほうがわかりやすいです。

図4.3.1.4 製品不良の現象別の件数と損失金額についてのパレート図

 

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参考文献
品質管理の演習問題と解説  仁科健編 日本規格協会

図表
表4.3.1.1 製品不良の現象別の件数と損失金額   ORG
図4.3.1.2 製品不良の現象別の件数と損失金額についてのパレート図   ORG
表4.3.1.3 製品不良の現象別の件数と損失金額   ORG
図4.3.1.4 製品不良の現象別の件数と損失金額についてのパレート図   ORG

 

ADD: 2021/01/31
ORG: 2019/5/6