5.6.1 QCサークル活動の展開

QCサークル活動の展開(development of QC circle activities)

 

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本コンテンツは、品質再構築のために、品質手法のリスキリング(オールドコンテンツですが)を希望されたクライアント様が、長年途絶えていたQCサークル活動を再開したいとの要望があり、管理人の経験に、新たにQCサークル関係の文献を読み直して、提案書として作成したものです。
実際には、直近の急激な円安により原材料費が上昇した結果、クライアント様の予算が下りなくて、中止になってしまいました。
もし、関心を持たれたマネジメント層の方がおられましたら、展開致します。お気軽に、御声をおかけください。

要旨

QCサークル活動の進め方・活性化について、以下の項目について考えてみます。
(1)QCサークル活動立上げにあたっての、QCサークルリーダー、推進者向けのブラッシュアップ教育
(2)日常管理活動を中心とした、QCサークル活動展開の提案
(3)QCサークル活動の見える化・共有化の手法

A:背景

1. 小集団活動としてのQCサークル活動の位置付け
1.1 小集団活動

小集団活動とは、「第一線でものづくりに携わられている皆様が、職場ごとに職場の課題や問題点をテーマに取り上げて、全員の創意工夫でこれらを解決していく小グループによる自主的な改善活動」のことをいいます。

1.2 QCサークル活動

QCサークル活動とは、「総合的品質管理活動(TQM)の一環として、QC手法などを活用して職場の管理改善を行う活動」のことをいいます。

1.3 小集団活動とQCサークル活動との関係

QCサークル活動は、小集団活動の代表的な取組の一つです。QCサークル活動は、主として品質についての問題点や課題を解決するためにおこないます。このほか、主として設備保全にかかわる問題点に取組む、TPMサークル活動があります。この活動にもQC手法は有効です。

2. 改善活動の3つのパターンとQCサークル

企業様で行う改善活動は、おおよそ3種類の課題への対応になると考えられます。

① 職場の課題:ボトムアップで行う小集団活動で対応
② 部門の課題:部門の共通課題を解決するためのプロジェクトを構成しての対応
③ 全社の課題:トップダウンの方針管理による職場横断的な対応

これらの課題が具体的にどのようなものかを考えると、
① 職場の課題:ムリ・ムラ・ムダの排除、5S、不適合品削減、間材費低減 など
② 部門の課題:仕掛品(中間在庫)削減、生産性向上、ヒヤリハットの撲滅 など
③ 全社の課題:納期遅延率低減、在庫削減など
が考えられます。

基本的には、QCサークル活動は日常管理の一環として、維持活動、改善活動を進める過程で①の職場の課題を潰し込む活動が対象となります。
ただ、現在ではもう少し上位の課題まで活動範囲を広げて、部分最適から全体最適を目指す改善活動のために、職場横断的なプロジェクト活動としてのQCサークル活動も要求されるようになってきています。

3. 近年指摘されるQCサークル活動の問題点

QCサークル活動については、近年形骸化しているとの指摘が数多く見られます。私も、過去何度かQCサークル活動に参加しましたが、QCストーリーに当てはめなければならないとの思いに、発表のために無理をして適用したQC7つ道具手法など、形にこだわり過ぎているのではとの思いを持った記憶があります。

一般的に言われているQCサークル活動の問題点を列挙します。

・活動が業務に役⽴っているという実感がわかない。
・⽅法論(QC7つ道具やQCストーリーなど)の活⽤・適用が難しい。
・業務が忙しく、活動への参加意識が薄れてしまう。
・資料作成など発表の準備に時間を割くのが難しい。
・発表のための発表で、はじめに結論ありき、失敗は報告されない。

ここで、特に問題となるのはQCストーリーありきのQCサークル活動になってしまいがちなことだと考えます。本来、QCストーリーの考え方は、PDCAサイクルのステップをより詳細に具体化したもので、小集団活動に限らず、会社などの組織体全般の問題解決に使える優れた手法です。
ただ、日常管理の改善活動として、QCストーリーのステップを見ると、全部実行していると、とてもじゃないけど改善する時間が取れないよ。という考えにも一理あるように思われます。

また、テーマを設定して目標を決めて取組む方法を、日常業務で取ることはあまり無いのではと考えます。むしろ発生した問題を何とかして、潰し込むことの繰返しではないかと考えます。

ただ管理人は、QCサークル活動にQCストーリーを絶対に適用できないとは思っていません。QCストーリーの根幹をなすPDCAサイクルを回す手順は日常管理にも必要な継続的改善を行うのにも適用できる手法になります。
しかし、QCストーリーには過度にこだわらず、「問題を見つけるステップ」から、「解決のためにいろいろな施策をする」、「効果を確認する」、「活動した結果を記録に残す」、の大筋さえ押さえればよいのではと考えます。

もちろん本来のQCストーリー手法に沿った活動は、2項に示す②、③の大きな問題や課題、職場横断的な課題に取組む場合には、担当者の方向性を一致させる上に、非常に役に立つと思います。

例えば、
・工場をIoT化することにより、工場の仕組みを大幅に変える。
・新しい設備を導入して、生産性を飛躍的に向上させる。
・一つの部署だけでは取組が困難な、慢性不良を解決する。
……

など、発生費用が大きい案件や、部門間の協力が必要、長期間かかるなどの問題を解決する場合には、PDCAサイクルを繰返し回すことによりスパイラルアップする必要があります。
目標に一気に到達することは難しい問題こそ、マイルストーンを定めて、PDCAのステップを具現化していくためには、QCストーリーは適切な手法だと考えます。
これをQCサークル活動に含めるかどうかは、各組織で十分検討する必要があります。管理人個人の思いとしては、これからQCサークル活動を始めようと考えている組織では、職場の課題の潰し込みから始めるのが妥当ではないかと考えます。

図1 小集団活動(QCサークル活動)の位置付け

 

B. 日常業務と改善活動

4. 日常管理としての維持活動・改善活動

日常管理活動には、SDCAサイクルを繰返し回す維持活動と、その過程で発見される業務上の問題点を潰し込むPDCAサイクルによる改善活動とがあります(図2 )。

図2 日常管理活動と現状打破

日常業務で発生する不適合品や異常、ムリ・ムラ・ムダなどは、多くの場合4Mの変動により発生します。これらの問題点を発見したら、原因を特定し、対策をはかり、効果が確認されるまで試行錯誤を繰返し、効果が確定されれば再発防止をはかるため業務の標準化をし、維持活動に戻ります(図3 )。

図3 日常業務の流れと改善活動

 

C. 日常管理のためのQCサークル活動

5. QCサークルに期待されるもの

企業は生き残りのために、より高い生産性やコスト削減、顧客ニーズの多様化などに取組む必要があります。また、働き方改革により労働時間の短縮などにも取組む必要があります。

このような時代に、小集団活動(QCサークル活動)は、何を目指さなければならないでしょうか。
学習のためのサークル活動、発表のためのサークル活動ではなく、本当の意味で日常業務を改善するサークル活動にする必要があります。

小集団活動(QCサークル活動)の役割として、一般的にいわれているのは、
① 日常業務の中で発生した問題をとらえて解決する。
② 現場スタッフによる小集団活動では解決できない、職場横断的な課題や工場全体の課題を提起する。
と考えられます。

①については、職場単位の小集団(QCサークル)の日常業務として捉えられます。多くの場合、業務時間内での解決になると考えられます。

②については、問題提起を受けた管理層は、直ちにフォローして、解決に向けての方策を講じる必要があります。部門共通の課題や工場全体の課題への取組みは、テーマが明確になっているので職場横断的な、場合によっては管理層も巻き込んだプロジェクトチームにより、計画的な課題解決を図る必要があります。
ただ、このようなプロジェクト活動についても、小集団活動(QCサークル活動)と捉えるかどうかは、各組織の御考えによると、前述致しました。QCサークル活動の範囲に含めると考える場合は、トップマネジメントの理解や、管理層の支援、フォローが確実になされていることが必須です。

6. 新しいQCサークル活動の考え方

何度も繰り返しになりますが、小集団活動(QCサークル活動)は、日常管理の一環として行われるものとの認識に立ち返るべきではないかと考えます。
以下の考えは、少数派の考え方かもしれませんが、実際にQCサークル活動を指導されている方達が発言されている内容で、私も共感するところが多いものです(例えば「客観説TQM:鵜沼代表」)。
組織のトップマネジメント、管理者層の皆様から見ると少し物足らないかもしれませんが、以下に私が考えるQCサークル活動の進め方について述べさせて頂きます。

6.1 QCサークル活動の枠組み

(1)活動期間:特に期間を定めない。
(2)発表会:半年に1回程度
(3)事務局:QCサークルリーダーと世話役管理職
      人数的には、20~30名程度まで。これより多い場合は複数編成にして、上位の事務局(各事務局リーダ+世話役管理職、)を設ける
(4)サークル人員の構成:4~10名程度が望ましい。リーダーとメンバー。基本は職場、班単位。
            テーマの規模により、更にサブグループを置き主体的な活動を進める。

6.2 QCサークル活動の進め方

(1)QCサークルは、年間を通じて、日常の仕事を進める(維持活動)際に発生する問題点(ムリ・ムラ・ムダ、非効率、後工程からの苦情など)を見つけて改善する(改善活動)。
このとき対象となるのは、日々発生する問題ですので、改善テーマが複数個あっても何ら問題はありません。むしろできるだけ多くの問題点を見つけることが重要です。
QCサークル活動は、それらの優先順位を決めながらも、複数個同時に取組んでも問題ありません。サークル内で、サブグループを組んで手分けして解決していくのがベストです(問題解決により多くの人が参画できるので、)。

(2)事務局は、可能な限り月1回の頻度でリーダー会議を主宰し、各サークルの改善活動の進捗状況を確認して、進捗が遅れていると報告されたテーマについては、その原因を把握して、応援やアドバイス等の必要な処置をQCサークル活動の責任者(製造部長、品質保証部長など)に提案する。

(3)QCサークル活動の責任者は事務局からの提案に基づいて、QCサークル単体では解決が難しい問題については、管理層に援助を依頼するなど、適切なフォローを行う。

(4)事務局は、半年に1回程度発表会を開催する。開催1カ月程度前に、各サークルでそれまでの期間に取組んだ問題の中から一つ選んで、発表テーマとして登録する。

(5)発表会は、各職場で行うことが望ましいと考える。責任者や事務局、各グループリーダーに加えて、近隣の職場(例えば、同じカテゴリーの製品を生産している職場)のスタッフも聞けるようにするのが望ましいと考える。

(6)発表内容については、「問題点、原因、試行、対策結果(場合により経過)」を含む内容で、資料の作成に極力時間をかけないようにすることを徹底する。無理に、QCストーリーに当てはめる必要はないことを、周知させる。

(7)事務局は年間を通じて、解決済の問題や、未解決の問題を層別し、責任者やトップマネジメ   ントに随時報告する。

これらを通じて、重要なポイントは以下の4つと考えられます。

・発表のための活動ではなく、問題を放置させない活動にすること。従って、複数の改善活動が同時期に行われていても問題ないことを共通の認識とすること。ただし、活動に費やす時間等については、管理層にて十分管理されるのが望ましい。

・日々の改善活動については、QCストーリーに当てはめる必要がないことを周知させること。

・発表会の際も、QCストーリーに当てはめるのが望ましい、あるいは容易であると考える場合は用いても良いが、無理やり当てはめることは避けること。

・小集団活動では困難な、大幅な改善を必要とする問題の場合、工場全体の問題として、取り上げてもらい、放置されることを無くすこと。解決すれば、もちろんQCサークル発表会のテーマの対象になります。

日常管理に基づいたQCサークル活動の流れを、図4 に示します。

図4 日常管理に基づいたQCサークル活動の流れ

 

D. QCサークル活動の進め方についての提案

7. 小集団活動(QCサークル活動)の見える化について

QCサークル活動を、職場全員(QCサークルスタッフ)が、常に自らも関与している活動であることを、より明確に意識して頂くために、QCサークル活動のアウトプット(途中経過を含めて)を示す掲示物として、改善活動報告書による運用を提案致します。

品質改善報告書は、主として日常業務で発生した問題点をQCストーリーのアプローチに準じた流れで、改善を進めた結果を記録していくだけです。基本は手書きで作成して頂くのが望ましいです。
図5は、管理人が所属していた組織で各職場単位(QCサークルの構成と同等のものです)に、後で述べます「見える化掲示板」に、掲示して、自職場、他職場、及びマネジメント層に、その職場の現在行われている、品質改善活動を見てもらえるようにしたものです。
この運用を正しく行っている職場でのものづくりは、安定したものでした。

図5 改善活動報告書の例

上述の「見える化掲示板」(図6)というのは、この品質改善報告書を掲示する他、管理図や生産性、スキルマップ、その職場での不適合是正報告などを掲示して、その職場以外の誰もが、職場の現在の状態を見ることができるようにしたものです。この活動も、当時の製造責任者が各職場に設置するように指示したものです。これを充実させることにより、大幅な品質改善効果がありました

いつでも誰でも、途中経過を含めて、活動の進捗状態がわかるようにしておく(見える化)ことにより、QCサークル活動に対するモチベーションを維持できると強く思います。

図6 QC活動板の例

 

8. QCサークル活動の実施の前に

QCサークル活動を円滑に進める上で、全員が品質管理についての基礎的な知識、例えばQC7つ道具、新QC7つ道具程度は理解できるように、望むべくは他の人に聞きながらでも良いので自分で使えるようになっていることが望ましいと考えます。

さらに、QCサークル活動の推進者、グループリーダーは、QCサークル活動の全般的な役割や運営についての知識およびQCストーリーについて応用例を含めた内容を理解しておかなければなりません。

サークルリーダー向けの研修としては、以下のような項目が考えられます。
・QCサークルの基本
・QCサークルリーダー・推進員の役割
・QCサークル活動の運営と推進
・QCストーリーでの問題解決とQC手法の活用
・QCサークル活動事例の理解

 

9. QCサークル活動の進め方

QCサークル活動の進め方については、組織の規模や状況により、いろいろ考えられますが、QCサークル活動の経験がない皆様の場合は、その原点であるQC手法(QC7つ道具、新QC7つ道具)の習得から進められるのがよろしいかと考えます。

以上//

 

参考文献
第3版 品質管理入門   石川馨  日科技連出版社
QCサークルのためのQCストーリー入門   杉浦忠、山田佳明  日科技連出版社
実務に直結! 改善の見える化技術   今里健一郎、高木美作恵  日科技連出版社

引用図表
図1 小集団活動(QCサークル活動)の位置付け
図2 日常管理活動と現状打破
図3 日常業務の流れと改善活動
図4 日常管理に基づいたQCサークル活動の流れ
図5 改善活動報告書の例
図6 QC活動板の例

ORG:2023/03/31