4.8 統計的品質管理

4.8 統計的品質管理(Statistical quality control)

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1.統計的手法

例えば機械加工で、マシニングセンターでの加工でも、手動での加工でも、同じ条件で加工しても、製作物にはバラツキがあります。そのバラツキは、一般には正規分布する性質がありますので、統計的に品質向上を図っていく管理手法を統計的品質管理といいます。

統計的品質管理手法を用いると、品質管理を経済的に行うことが出来ます。そのため、統計的品質管理はものづくりの現場で広く使われています。製造現場で使われる代表的な統計手法として、QC7つ道具があります。

TQM活動についても、経済的でかつ効果的にすべての部門に統計的品質管理手法を活用して経営の質の向上を図っていくことが必要です。

2.データ収集の原則

統計的品質管理を行うためには、まずデータを収集する必要があります。データを収集するうえで、次の4つの考え方を満足することが必要です。

(1)目的明確化

データ収集の目的を明確にしなければなりません。それとともに、データの出所を明確にして記録を残すことが必要です。

(2)数値化

データを統計的に処理するためには、データを数値化する必要があります。データの数値化の例として、長さや質量などの「計量値」で表す方法と、不適合数や欠点数のような「計数値」で表す方法とがあります。

(3)層別化

データを収集する際に気を付けなければいけないことは、取集されるデータの作業条件が同一であることです。例えば材料の加工で、材料ロットが異なると作業条件が違うことになります。材料のロットごとに収集データを分けて取り扱うことを層別といいます。
収集するデータは、材料別や、機械別、作業者別、作業条件別などに層別して取り扱うことが必要です。

(4)ランダム化

収集されるデータは、同一作業条件で作業された多数のもの(母集団といいます)から抜き取ることになります。この場合、母集団のばらつきと抜き取られたもののばらつきの程度が同じにある必要があります。そのためには、母集団からランダムに抜き取ることが必要です。

3.基本的な統計用語

統計的管理手法を適用するにあたって、知っておくべき基本的な統計用語を示します。
ボルト製造を例として、これらの統計用語の関係を示します(図4.8.1)。

(1)母集団(population)

データを収集して品質を管理する場合、その対象となる材料や部品、製品などの集合を母集団といいます。母集団には無限母集団(infinite population)と有限母集団(finite population)とがあります。ここで有限母集団は一般的にはロットと呼ばれます。
例えば、ボルトの製造会社で考えてみましょう。製造会社は会社が存続する限りボルトを製作し続けますが、その場合無限大に近いボルトを製作することになります。この会社で製造されるボルトのように無限に続くような集団を無限母集団といいます。一方、これを細分化して、複数のボルトの製造設備の内の一つが、ある日に10 000本製造したとするとこの10 000本が有限母集団となります。
JIS Z8101 に示される定義です。
母集団:考察の対象となる特性をもつすべてのものの集団
無限母集団:大きさが無限大であると考えられる母集団
有限母集団:大きさが有限である母集団

(2)標本(sample)

標本とは、母集団の中から、その特性を調べるために抽出するデータをいいます。サンプル、または試料と同じ意味で使用される場合もあります。
JIS Z8101 に示される定義です。
標本:母集団の情報を得るために,母集団から取られた一つ以上のサンプリング単位

(3)平均(avarage)

標本データの平均値を示します。
JIS Z8101 に示される定義です。
(算術)平均:観測値の総和を観測値の個数で割ったもの。

(4)偏差(deviation)

標本の各データと平均との差。

(5)分散(variance)

平均からのばらつきの程度を見る指標。偏差と標本数から算出します、Vと表記します。
JIS Z8101 に示される定義です。
(標本)分散:各観測値の平均値からの偏差の二乗の和を観測個数(標本数)から1を引いた値で割ったバラツキの尺度。

(6)標準偏差(standard deviation)

平均からの標準的なばらつきの程度をみる指標です。分散の正の平方根です、
JIS Z8101 に示される定義です。
(標本)標準偏差:標本分散の正の平方根

(7)範囲(range)

全ての値が収まる範囲のこと。最大値と最小値との差になります。Rで表します。
JIS Z8101 に示される定義です。
範囲:計量的な観測値の最大値と最小値の差。

(8)中央値(median)

標本のデータを、順番に並べて真ん中にくる値のこと。
JIS Z8101 に示される定義です。
中央値:観測値を大きさの順に並べたとき、ちょうどその中央に当たる一つの値(観測値の個数が奇数個の場合)、又は中央の二つの値の算術平均(測定値の個数が偶数個の場合)。

(9)最頻値(mode)

最も頻度が多く現われる値のこと。 1つとは限りません。

(10)母数(parameter)

母集団の平均値,分散,-標準偏差などを総称して「母数」と呼びます。

図4.8.1 基本統計量の例

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4.より高度な統計用語

(1)工程能力指数

製品特性として与えられた上側・下側規格限界(図面で言えば公差)と特性の標準偏差をもとにして求めるのが、工程能力指数です。
一般には、規格の幅(上側・下側規格限界で示される範囲)を6x標準偏差で除したもので定義されます(両側公差の場合)。記号はCpで表します。求められた値が、規格幅と比較してばらつきがどの程度小さいかを評価します。
なお、規格限界が片側しかない場合や上側と下側で異なる場合は3x標準偏差で除した値を用います。記号はCpkで表します。
製品や部品のバラツキを評価するのに用いられます。

もう少し詳しい説明が下記リンクにあります(弊方が作成している別サイトに置いています)。
→ 工程能力指数(日本の国でものづくり)

(2)検定・推定

検定・推定とは、少数のデータからデータの母集団の状態を、数理統計学の理論を用いて調査する方法です。
検定は、事前の仮説が成り立っているかを調べます。推定は、対象がどの範囲にあるかを調べます。
例えば、サービスで対策の効果を、少数の顧客のアンケートから評価するときなどに使用されます。

(3)相関分析

相関分析とは、2つの対になったデータについて相関関数などを用いて。これらの関係を調べる方法です。相関係数は、これらの関係を-1~+1の間の値で表します。+側が正の相関、-側がふの相関になります。
相関係数が+1の場合は、両者が右肩上がりの直線であらわすことが出来ます。一方、-1の場合は、右肩下がりの直線になります。

(4)回帰分析

回帰分析とは、結果などを表す目的関数とそれに関連すると考えられる説明変数について、収集済のデータを用いてこれらの関係を調べます。具体的には、目的変数と説明変数との関係をできるだけ簡単な数式で表します。
例えば、水系洗浄の洗浄水中の防錆剤濃度を管理する際に、水への添加量を計算する際に使用されます。

(5)実験計画法

実験計画法とは、対象についてのデータを計画的に収集して、それを統計的に解析することにより、最適条件を効率的に求める手法です。
実験計画法には様々な方法があります(表4.8.2)。最も基本的な手法は要員計画です。日本では、田口玄一博士が考案したロバスト条件を求める田口メソッドが有名です。
実験計画法を使いこなせるようになると、改善や研究開発の効率を飛躍的に向上させることが出来ます。

表4.8.2 実験計画法の種別

(6)多変量解析

多変量解析とは、大量のデータを目的に応じて解析するための方法論の集合です。多変量解析は、ものづくりのみならず人へのサービスなど幅広い分野で適用されます。漠然とした状況を、データから整理したり、仮説を構築するのに役立ちます。

 

 

参考文献
図解よくわかるこれからのTQM    山田正美    同文館出版
入門・生産と品質の管理    冨士明良    山海堂
TQM品質管理入門  山田秀  日経文庫
図解でわかる品質管理いちばん最初に読む本  神谷俊彦  アニモ出版

引用図表
図4.8.1 基本統計量の例   図解でわかる品質管理いちばん最初に読む本_改
表4.8.2 実験計画法の種別  TQM品質管理入門

 

ORG:2019/5/19