4.3.6 散布図

4.3.6 散布図(scatter diagram)

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1.散布図とは

散布図とは、「対になった2つのデータをプロットして、データ相互の関係を調べるグラフ」をいいます。
例えば、電流密度とめっき厚さとの関係や、水溶性切削液の濃度と糖度計の読み、部品の正味洗浄時間とコンタミナント重量など、2つのデータの関係の有無を調べたいときが多々あります。そのような場合に相関関係の有無を視覚的に表すのが散布図です。

 

2.2つのデータの関係

散布図に用いられる2つのデータは、何らかの因果関係があります。これら2つのデータの関係については、以下に示す3つの場合が考えられます。

(1)特性と要因との関係(結果と原因との関係):

特性要因図で、特性に対して考えられる、いろいろな要因について、特性と要因とのデータの関係を見ることにより、2つの間の因果関係を直接調べることができます。
この関係に該当するのは、例えば、塗膜厚さと塗料粘度や、製品不良率と原料の純度、反応温度と製品の収率、距離と音の減衰、夏場の気温とビールの売上高などがあります。

(2)特性と特性との関係(結果と結果との関係):

ある結果と別の結果との間に関係があるという事は、両者に共通の原因があると考えられます。共通の原因を追究することで問題が解決や、日常管理に役立つ関係を見つけることができます。
この関係に該当するのは、例えば、製品の生産量と不適合品率や、人の体重と身長との関係が考えられます。

(3)一つの特性に対する2つの要因の関係(原因と原因との関係):

特性要因図で2つの要因の関係が大骨と小骨の関係であれば因果関係があると推定されます。一方、まったく関係ない要因と要因との間にも相互関係がある場合があり、散布図を描くことにより真の要因を見つける手掛かりになります。
この関係に該当するのは、例えば、電気炉の加熱温度と加熱時間などが該当します。

 

3.散布図のつくり方

散布図のつくり方を表4.3.6.1に示す鋼材のある成分の含有量と硬さとの関係に基づいて散布図を作成していきましょう。

表4.3.6.1 鋼材の成分(質量%)と硬さ

手順1 対になったデータを収集してデータシートにまとめる。

相関関係の有無を確かめたいと考える対になった2種類のデータを集めてデータシートに記入します。少なくとも30組以上のデータを集めないと、相関関係の有無を見ることは難しいです。
2種類のデータで、原因と思われるデータをx、結果と思われるデータをyとする。本例では、ある材料の成分が原因x、平均硬さが結果yになります。

手順2 データの最大値と最小値を求める。

2種類のデータx,yについて、それぞれの最大値と最小値とを求めます。
本例では、

材料成分x (%): 最大値;1.13(No.45),最小値;0.07(No.53)
平均硬さy (-): 最大値;31.80(No.34),最小値;19.8(No.53)

となります。

手順3 横軸と縦軸とを設定する。

横軸をデータx、縦軸をデータyに取ります。
x,yとも最大値と最小値との差が横軸・縦軸でほぼ等しくなるように目盛を調整します。

手順4 データをプロットする。

データをグラフにプロットします。同じデータが存在して点が重なる場合は、近接させて打点するか、二重丸/三重丸にするのかの何れかの表示方法を取ります。

手順5 必要事項を記入する。

散布図の作成目的や、製品名、工程、データ数、作成日、作成者などを記入して完成です。
本データに対する散布図を、図4.3.6.2 に示します。

図4.3.6.2 材料成分と平均硬さの散布図   ORG;「第3版 品質管理入門」データによる

エクセルを使えば、データを選択して[グラフの散布図]を適用すれば簡単に作成できます。

 

 

4.散布図の見方

4.1 相関係数

散布図は、2つのデータの関係を視覚的に見ることができます。2つのデータに強い相関があれば、工程の最適条件を決めたり、管理するのに有効です。
相関の強さの程度をあらわすものとして、相関係数が用いられます。相関係数は、2つの特性の標本分散をそれぞれの特性の標本標準偏差の積で除したものとして定義されます。
相関係数は、1~-1の範囲の値を取ります。1の場合は極めて強い正の相関、-1の場合は極めて強い負の相関関係を示します。

エクセルを用いれば、「データ分析の相関」により簡単に求めることができます。

 

4.2 相関の程度

散布図にあらわれる2つのデータの関係の強さについては、図4.3.6.3 に示すような分布が考えられます。

図4.3.6.3 いろいろなデータの関係

(1)強い正の相関:
図(a)が該当します。xが増加するとyも増加します。yの変化の大部分は、xが影響します。従って、xを管理すればyが管理できることを示しています。

(2)弱い正の相関:
図(b)が該当します。xが増加すればyも増加する傾向にはありますが、その関係は「強い正の相関」と比較すると弱いです。yの変化にはxが原因していますが、その他の要因もあることを示しています。xが影響する度合いが少ないことを示します。

(3)強い負の相関:
図(c)が該当します。xが増加するとyが減少します。「強い正の相関」と同様、yの変化の大部分がxに影響されます。従って、xを管理すればyをほぼ管理できることを示しています。

(4)弱い負の相関:
図(d)が該当します。xが増加すればyは減少する傾向にはありますが、その関係は「強い負の相関」と比較すると弱いです。yの変化にはxが原因していますが、その他の要因もあることを示しています。xが影響する度合いが少ないことを示します。

(5)相関無し:
 図(e)が該当します。yの変化は、xに関係無い状態を示します。「弱い正(負)の相関」や「相関無し」の場合は、x以外の原因が無いか、更にに調査する必要があります。

(6)直線的な相関無し:
図(f)が該当します。xとyとが直線的に比例して変化することはありませんが、点の並び方に何らかの傾向が認められます。

例えば、化学反応では、操作温度と収量との関係で収量を最大にする最適な温度があるので、この形の散布図になります。

 

5.散布図の使い方

5.1 異常データの取扱い

データをプロットして、異常な点が無いかを確認します。点の集まりから、かけ離れた位置に点があればその原因を追究する必要があります。例えば、作業条件が変更されたりとか、測定の誤りなど他のデータと差異を生じる原因がわかれば、その異常なデータを除去して判断する必要があります。

5.2 層別により掘り下げる

データをプロットした点に一見相関関係が無いように見えても、データを得る際の条件が異なる場合は、層別して散布図を描くとそれぞれに強い相関がある場合が往々にしてあります。
データを取る際、要因と思われるものについてはあらかじめ層別してデータを取るのが望ましいです。1枚の散布図に表す場合はデータを色分けや印を変えるとわかりやすいです。

逆に相関が認められると判断される場合でも、例えば機械加工品でA,B,Cの3種類の機械別に層別してデータをプロットすると、xとyとの間に相関が認められない場合もあります。この場合も、1枚の散布図で表す場合はデータを色分けや印を変えるとわかりやすいです。

5.3 相関の持つ技術的な意味を考える

層別されたデータに基づいて得られた相関は、2種類の特性値の間に因果関係があるか否かを示してくれます。しかし散布図だけでは、なぜこの相関関係になるのかの理由はわかりません。
散布図を作成して相関があると判断したら、なぜその相関が生じるのか、技術的に説明できなければなりません。技術的に相関があるとは考えられない、すなわち因果関係が認められない場合でも、散布図では相関があるように見える場合があります。
このような場合に起こすアクションは、たいてい的外れになり問題解決につながりません。これは、データの持つ意味を深く考えず、データを取る条件があいまいな場合によく起こります。

 

6.散布図のためのデータの取り方のポイント

6.1 目的を明確にする。

どのようなものを解析しようとしているのか、その狙いを明確にする必要があります。知りたいことが何かにより、集めるべきデータが異なります。

①どんな不良項目が多いかや、穴内径加工寸法のばらつきのように1種類のデータを取扱えばよい場合。

②切削液温度が仕上がり寸法のばらつきに与える影響のように2種類のデータを必要とする場合。

これらの内、②のように2種類のデータを扱って解析する手法が散布図です。

6.2  2種類のデータの関係を考える。

2種類の対になるデータが得られたとしても、いきなり散布図に落とし込んでしまうと、誤った判断をしてしまいます。データの関連性について、あらかじめ考えてから散布図を作成する必要があります。
ただし、技術的に明確な意味付けができない場合でも、何か関係がありそうだと判断できる場合は、散布図に落とし込んで相関が認められれば更に深く調査する必要があります。

6.3 対応するデータを取る。

2種類のデータ間に関係がありそうと判断したら、データを取りましょう。データを取る際、お互いの関係が結びつくように1個1個対応付けを取りましょう。

6.4 データの履歴を明確にする。

データを取る際は、データの属性をできるだけ分かるようにしておきましょう。そうすれば、作業者別や機械別、材料別、作業工程別など、色々な側面から層別が可能となり、原因追及がしやすくなります。

 

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参考文献
すぐに使えるQC手法    片山善三郎他   日科技連出版社
よくわかるQC7つ道具の本   石井敏夫   日刊工業新聞社
品質管理の基礎実務    武田正一郎   技術評論社
第3版 品質管理入門    石川馨   日科技連出版社

 

引用図表
表4.3.6.1 鋼材の成分(質量%)と硬さ   元データ:第3版  品質管理入門
図4.3.6.2 材料成分と平均硬さの散布図   ORG;「第3版 品質管理入門」データによる
図4.3.6.3 いろいろなデータの関係   すぐに使えるQC手法

 

 

ORG:2021/02/18