4.3.2 特性要因図

4.3.2 特性要因図(cause-and-effect diagram)

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1.特性要因図とは

特性要因図とは、仕事の結果(特性)に原因(要因)がどのような形で関係しているのか、一目でわかるように整理した図です。特性要因図はQC7つ道具のの中で、唯一数値データではなく言語データにより解析を進めます。

特性要因図は、1952年東京大学の石川先生が考案されました。その時のエピソードとして以下の話が伝わっています。石川先生がある企業の品質指導をされている際に、技術者より「問題に対して、原因が多すぎて整理できない。」との声が上がったのに対して、黒板に図を描いて説明したことにはじまるといわれています。

そのため、特に海外では”イシカワ・ダイアグラム(ishikawa diagram)”ともいわれています。またその形状から、魚の骨(fish bone chart)といわれることも多いです。

図4.3.2.1 特性要因図の構成

 

2.特性と要因の意味

“特性”とは、長さや、面粗度、不良率など、製品の品質を表す品質特性を省略したタームです。また、製品の性能や働きを示す言葉でもあります。製品は、生産活動の結果として産出されるものですので、特性とは生産活動の結果を表したものとも言えます。品質管理では、特性=結果として取り扱います。

“要因”とは、原因の中で大きなものをいいます。製品の品質を表す特性は、色々な原因により変化します。色々ある原因のうち、特性に影響を与えていると考えられるものを要因として特性要因図に記述します。

特性要因図は、品質特性に影響を与える原因は何かを探り出す手法といえます。

 

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3.特性要因図の作り方

手順1:問題とする特性を決める。
特性を具体的に示すと、仕事の結果として生じる品質や、生産量、コストなど製品に直結するものだけではなく、職場の安全やモラルなどの職場環境も考えられる範囲です。特性には仕事の結果として得られた事実をできるだけ具体的に示します。
ただし、特性は事実をできるだけ具体的に表す表現として下さい。できれば具体的な数値で表されるものが望ましいです。例えば、ある製品の不良率を改善したい場合、「製品Aの不良率を低減させたい。」よりも、「製品Aの不良率を600ppm以下にしたい。」とした方が、より具体的な要因を見つけられる可能性が大きいです。

手順2:問題とする特性を記入する。
特性を用紙の中央右端に書いて、四角の枠で囲みます。それに向かって、左側から右側に太い矢印線を描き入れます。この矢印線を背骨あるいは幹といいます。

手順3:大骨を記入する。
次に大骨(大枝)を記入します。多くある要因を大まかに4つから8つ位に分類して、背骨に向かって斜めに大骨を記入します。特性に影響を与える原因には色々なものが多数考えられます。これら多くの原因のうち、特性に大きな影響を与える原因を要因といいます。さらにこれらの要因の中でも、特に影響の大きいものを要因の大分類項目として大骨として取り上げます。
ものづくりの現場では、大骨の分類に4Mがよく使われます。4Mとは、”man”(人)、”machine”(機械)、”material”(材料)、”method”(方法)のそれぞれの頭文字が”M”を取っていいます。その他、5M(”measurement”(測定)を追加)、6M(”money”(資金)を追加)、4M+E(”environment”(環境)を追加)などもよく使われます。

 

表4.3.2.2 4M,5M,6M,4M+E     参考:品質管理の基礎実務

手順4:中骨、小骨、孫骨を記入する。
大骨の項目について、具体的なアクションを取るには漠然とし過ぎる場合がほとんどです。そこで、大骨に示す項目に対して考えられるより具体的な原因を階層化して、中骨(中枝)、小骨(小枝)、孫骨、もっと小さな骨へと、次々に要因(原因)を分解して、具体的なアクションが取れる要因(原因)なにるまで分解して記入します。特性要因図の書き方のテキストでよく書かれているのが、カレイの骨ではなくゴジラの骨になれという言葉です。
ある特性に対して、要因(原因)を考え出すためには、関係者をできるだけ多く集めて自由に発言できるように、例えばブレーンストーミング手法を用いるも良いアイデアです。

手順5:要因を確認する。
要因が出尽くしたなと考えたら、描かれた特性要因図を眺めながら、参加者全員でその内容を確認していきます。その際のチェックポイントは2つあります。

ポイント1:要因にもれは無いか
メンバー全員で要因が出尽くしているかを確認してください。
一人の人間が検討するだけでは、どうしても、ものの見方や考え方に偏りが生じます。多くの人が意見を出し合って、それらを整理することにより、広い範囲の色々な見方が出来て、要因をもれなく挙げることができます。
このとき、可能な限りサークルメンバーだけではなく、後工程の作業者や、管理・監督職、間接の人など、関係する色々な人たちの意見を集約すれば、より役に立つ特性要因図になります。

ポイント2:大骨→小骨→孫骨の因果関係が正しいか
大骨の要因が中骨、中骨の要因が小骨、小骨の要因が孫骨...というように、因果関係が正しく並べられているか、間違ったところに置かれていないかをチェックしてください。このチェックのときに有効な方法が「なぜなぜ分析」です。一つの中骨の要因に対して複数回なぜ?、なぜ?...を繰り返してください。一般的には、なぜなぜを5回繰り返すと、5回目のなぜの裏返しが対策になるといわれています。

手順6:要因の重みづけをする。
一つ一つの要因に対して、特性に与える影響の程度と対策が可能かとの2つの観点から、要因の重みづけをします。
特性に対して、大きな要因は何か、一番影響を与えている要因はどれかを、メンバー全員で検討してください。実際の仕事から得られた経験に基づいて、特性に影響を与えると思われる要因を、四角で囲んだり、色を変えたりして、一目見てわかるように表示してください。

図4.3.2.3 重要な要因をマーキングした例

手順7:特性要因図に関連事項を記入する。
特性要因図がひととおり出来上がったと判断したら、特性要因図の余白の部分に、特性要因図の名称や、作成年月日、作成者名、関連事項などを記入します。
別項でも述べますが、ここでできた特性要因図は完成形ではありません。ものづくりや仕事の場面で特性要因図に挙げた特性がある限り、改善を進めて改善した結果を反映した新たな特性要因図をつくる必要があります。

 

4.特性要因図の作り方のポイント

(1)要因は多くの人から、たくさん集める。
要因を考える際は、できるだけ多くの人から、しかもいろいろな角度からのものの見方で、多くの意見を集めるようにします。一見すると関係なさそうな原因でも、思いつくものはすべて要因として挙げるようにしてください。これを効率的に行えるのが「ブレーンストーミング手法」です。
挙げられた要因について、それらの因果関係を検討しながら、特性要因図に書き込んでいきます。できるだけ枝分かれした、いわゆる「ゴジラの骨」になるようにしてください。

(2)常にアップデートする。
特性要因図は描きっぱなしでは、あまり効果がありません。完成した特性要因図は、職場に掲示して誰でも見ることができるようにしてください。
問題が起きたときは、その特性要因図を眺めて要因や対策を検討してください。要因について新しいことが分かったときは、それを追加したり、修正したりしてください。
特性要因図は、その職場が持っている技術・技能や、現在判明している事実を誰にでもわかる形にまとめたものです。
職場の現状に合った特性要因図に、常にアップデートして、実際に職場で行われている仕事と特性要因図とを結びつけて、職場の管理や改善を進めていかねばなりません。

(3)特性も要因も、可能な限り数値化に結び付くキーワードと具体的な数値が望ましい。
特性は、結果として得られた事実、いわゆる「悪さ加減」で表すのが望ましいです。そしてできるだけ数値で表すことができるものにするのが、良い特性要因図を作成するコツになります。例えば、不適合品発生率や、クレーム件数、生産量などが、数値化に結び付け易いです。
特性を悪さ加減で表すと、その要因もより具体的な形で挙げることができます。その結果、要因の追及がしやすく、生きた特性要因図になります。さらに数値で表すことができれば、要因の影響度をデータに基づいて解析して、対策の効果の程度を調べることができます。

(4)一つの特性に対しては一つの特性要因図をつくる。
特性要因図は、一つの特性に対して作るべきです。例えば、製品の不具合だからといって、寸法不良と形状不良とを一緒にして、「製品の寸法不良・形状不良」を特性とするのはよくありません。これでは、特性と要因との関係があいまいになって、良好な処置がとることができません。
特性ごとに別々の特性要因図をつくる必要があります。一つの製品でも、発生する不良の内容は色々あります。不良内容によって、要因も取るべきアクションも異なってきますので、不良内容を層別して特性要因図をつくることが必要です。例えば、機械加工部品であれば寸法不良や、面粗度不良、工程抜け、傷などいろいろな不良内容が考えられます。

(5)重要要因について、これを特性にした特性要因図を作り、更に要因を追求する。
作成された特性要因図から、重要な要因を取り出してそれを特性に取り、更に詳しい特性要因図をつくっていくというように、要因を細かく分解して追及することが大切です。
一つの特性要因図で済ませるのではなく、重層的に何枚も特性要因図をつくることで、真の要因、有効な対策の打てる要因に到達できます。

(6)現地現物で事実を確かめながら要因を絞り込む。
特性要因図をつくるときは、メンバーの観察結果を持ち寄って要因を導きだします。しかし、多くの場合いろいろな要因が絡み合って、メンバー一人一人の観察結果だけでは一つに絞り込めないことが多いです。
そのような場合、複数得られた要因について、メンバー全員で実際の製品製作の過程を、現地現物で事実を確認することにより、真の要因に到達できることが多いです。
とかく頭の中だけで考えていると、導き出される要因も抽象的になりがちです。現地現物で事実に基づいて問題となる特性がどのような過程で発生するのか、要因を系統的に整理することが、優れた特性要因図をつくるコツです。

 

5.特性要因図の効果

(1)特性要因図は適用範囲が広い。
特性要因図が適用できる範囲は、製造現場だけではありません。間接部門や、接客・サービス業など、どんなところでも、また誰でも作ることができます。手順を見ながら、気軽に作ってみてください。得られる効果は想像以上です。

(2)特性要因図は皆の知見をまとめる手法。
特性要因図は、テーマを決めて皆の持っている知識や考えを集めて整理し、まとめる手法です。いろいろな人をメンバーにして、一緒になって特性要因図をつくると、それぞれの人が頭の中に持っているものを吐き出せます。皆から出た意見は特性要因図に書き込みながら作成が進みますので、各自が発言したことはテーマのどの位置に当てはめられるのか、皆で考えながら進めることができます。
特性要因図をつくる過程は、話し合いをする際の道しるべとなるので、効率的に話し合いを進めることができます。

(3)特性要因図は管理の道具
特性要因図が、その製造工程に掲示されていれば、不良品が発生したときや、クレームがあったとき、特性要因図を見ながらその原因を比較的容易に探索することができます。そのため、不良原因に対して適切な対策を打つことができます。特性要因図は管理の道具として使うことができます。

(4)特性要因図は改善の出発点。
特性要因図は、問題の原因を整理して、改善点を見つけるときに用いられます。特性要因図は、職場改善を進めるために必ず使われる手法です。特使要因図の作成は、問題解決の出発点です。

(5)特性要因図作成を通して教育が可能。
特性要因図をつくることは、職場のメンバーの経験や技術を話し合いの中でまとめることになります。これは、個々の人では持っていない知見を他の人から得られる仕事のスキルを上げることになります。
さらに、特性要因図は、職場が保有する技術の内容を描いているので、新人に仕事を教える場合に優れた教材になります。

(6)特性要因図は職場の技術水準を表す。
前項にも既述したように、特性要因図はその職場が現在保有している施術の内容をわかりやすくまとめたものになります。作業標準を作成したり改定する際に、特性要因図を用いると、仕事の内容が詳細にわかり、作成や改定作業がよりしやすくなります。
特性要因図を見ると、その職場の技術水準がわかるともいわれています。

 

6.特性要因図の有効活用

(1)我々の最終目的は、特性要因図を上手に用いて、問題とする特性とそれに影響を与える要因を見つけ出して、問題を解決して職場改善を図ることです。そのためには、特性要因図を多くの関係者と一緒になってつくることにより、関係者の参画意識が強くなり、支援や協力が得やすくなりますので、問題解決のスピードが早くなります。

(2)特性要因図では、特性と要因との因果関係が明確に表されているので、最も重要だと思われる要因にはマーキングを施して目立たせると、関係者全員に周知しやすくなります。そうすることにより、重要な要因から対策を立案して、潰し込みをすることができます。

(3)前項でも記述しましたが、特性要因図を作成する過程では、その工程に関わる人たち全員が参加して、特性要因図を作り上げることが大切です。特性要因図作成の過程で、改善すべきと認めた事項については、標準化して、どんどん実行するようにしなければなりません。

(4)特性要因図の要因の導出過程で、部門別、職場別に責任区分が明確になるような分類でつくると、工程管理のアクションに用いることができます。

(5)要因を、散発的なものや、周期的なもの、慢性的なものに分けて考えることが重要です。要因の中で、特に異常原因になりやすいものにはマーキングを施すと対策のポイントが明確になります。

(6)要因と要因、あるいは特性と要因との相関を、散布図を用いて定量的に解析することを試みてください。交互作用があると判断される場合は、それがわかるように記号付けをすると良いです。

(7)どの要因が、群内のばらつきに影響するか、群間のばらつきに影響するかを分類しておくと、管理図を解釈する際に役立ちます。

このように、他のQC7つ道具との連関を考えておくと、より特性要因図の有用性が高まります。

 

 

7.特性要因図の他の分野への適用

特性要因図は、QC7つ道具として、製造現場への適用にとどまらず、防災管理や、安全管理、環境管理、IE(インダストリアル・エンジニアリング)、OR(オペレーションズ・リサーチ)など、幅広い分野に適用されています。

 

8.特性要因図の例

他のQC7つ道具についても同様ですが、特性要因図は自分で作ってみることが大事です。職場の仲間と一緒に、さらに上司を巻き込んで、グループで行うと、皆の知見を取り込むことができて、優れた特性要因図をつくることができます。ぜひ、と対してみてください。

本項では、皆様の参考になるような、先達が発表している書籍・文献から抜き出してみました。

皆様にとって、これらがベストの回答ではありません。皆さんが一生懸命考えて出来上がった特性要因図が、現時点での皆様のベストです。

図4.3.2.4 歯車騒音の工程分類型の特性要因図

図4.3.2.5 よい作業標準を作るにはの特性要因図

図4.3.2.6 微粒子製造のための特性要因図

 

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参考文献
入門・生産と品質の管理    冨士明良   山海堂
すぐに使えるQC手法    片山善三郎他   日科技連出版社
よくわかる「QC7つ道具」の本    石井敏夫   日刊工業新聞社
品質管理の基礎実務    武田正一郎   技術評論社
第3版 品質管理入門    石川馨   日科技連出版社
Juran’s Quality Handbook   5th ed

 

引用図表
図4.3.2.1 特性要因図の構成    企業内教育テキスト
表4.3.2.2 4M,5M,6M,4M+E     参考:品質管理の基礎実務
図4.3.2.3 重要な要因をマーキングした例   企業内教育テキスト
図4.3.2.4 歯車騒音の工程分類型の特性要因図   品質管理の基礎実務
図4.3.2.5 よい作業標準を作るにはの特性要因図   品質管理の基礎実務
図4.3.2.6 微粒子製造のための特性要因図   Juran’s Quality Handbook

 

Add:2021/02/16
ORG:2021/02/06