B10ライフ

B10ライフ(B10 life)

 

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1. B10ライフとは

信頼性工学は、製品や部品が使用される過程で、いつ、どのように故障するかを予測することが非常に重要です。正しく予測することは、メンテナンス計画の立案、故障の予防、製品の改良などに有用です。例えば、ある製品のB10ライフが100時間だとすると、その製品は100時間稼働するまでに10%が故障する可能性があります。これは、製品の保守計画を立てたり、故障による損失を予測する上で役立ちます。

「B10ライフ」は、特に製造業で多く採用されている信頼性の指標で、部品や製品の寿命分布を表すために使用されます。通常、寿命データはワイブル分布や正規分布などの統計的手法を用いて解析されます。

 

2. B10ライフの定義

信頼性工学における、B10ライフという概念は、製品や機器の信頼性を評価するための重要な指標の一つです。この指標は、特定の製品や部品が故障するまでの寿命を統計的に分析することで、その製品の信頼性を数値で表現します。B10ライフとは、「製品や部品全体の10%が故障するまでの期間」のことをいいます。また、「故障確率の累積値が10%になるまでに時間」ともいわれます。

このことから、B10ライフは、「この時間までは、少なくとも90%以上は故障しない」といい換えられるので、寿命を評価する尺度になります。

すなわち、

 B10ライフ
 =「10%が故障するまでの時間」
 =「信頼度が90%となる時間」

となります。

 

数学的に定義すると、時間tにおける故障の密度関数を\( f(t) \) とすると、信頼度は

\( R(t) = \displaystyle \int_{ B_{ 10 } }^{ \infty } f(t) dt = 1 – F(t) \)

になります。

一方、B10ライフを不信頼度と定義すると

\( B_{ 10 } = F(t) = \displaystyle \int_{ 0 }^{ B_{ 10 } } f(t) dt \)

 

3. B10ライフの計算方法

B10ライフを計算するためには、まず製品や部品の寿命データを収集する必要があります。

このデータは、実際の使用状況を想定した加速寿命試験によって得られることが多いです。データが収集されたら、統計的手法を用いて10%の故障率に相当する寿命を計算します。この計算に用いる寿命分布としては、ワイブル分布や対数正規分布、指数分布が用いられます。これらの分布に基づいてパラメーターを推定し、それを基に寿命データの分布を描くことが含まれます。

いろいろな寿命分布が使えると記述しましたが、最も一般的な方法はワイブル分布に基づいて計算する方法です。

ワイブル分布(Weibull distribution)は、スウェーデンの金属学者ワイブル(Ernst Hjalmar Waloddi Weibull)が考案した、鎖を引っ張る場合、最も弱い輪が破壊することにより、鎖全体が破壊するとした最弱リンクモデルを表す、確率分布になります。

ワイブル分布に基づいて、B10ライフの定義式は以下のようになります。

ここで、
\( \eta \) : 尺度パラメータ
\( m \) : 形状パラメータ
\( \gamma \) : 位置パラメータ

これらのパラメータは、製品の故障データに基づいて推定することができます。

 

4. B10ライフの意味

B10ライフの元々の語源は、軸受メーカが⾃社の軸受の寿命を表す際に考えられたといわれています。そのため、”Bearing” のBが付けられているとのことです。

例えば100個の転がり軸受を同じ条件で寿命試験を行うと、転がり軸受の代表的な損傷であるフレーキングが発生するまでの寿命は、著しいばらつきを示し、もっとも寿命が短い軸受に対して、もっとも寿命の長いものは、50~100倍の値を示すことは珍しくありません。

転がり軸受では、寿命試験を行ったグループ全体のうち、90%の軸受の寿命を保証するような寿命(時間または総回転数)をとり、定格寿命と名付けて寿命の代表値としています。

なお、全数のうち半数が損傷するような寿命(50%寿命)をメジアン寿命といいます。近似的には、定格寿命の約5倍になります。

B10ライフが重視されるのは、メンテナンス(交換)の時期の目安になるからです。その意味で、摩耗系故障が主となる製品・機器に適用されることが多いです。

信頼性をB10ライフで評価する意味合いは、信頼性のばらつきを考慮して評価することにあります。図1 に示すように、平均値(MTTF)はほぼ同じで、ばらつきの程度が異なる2つの分布 \( f_{ B } ( t ) , f_{ B } ( t )\) を想定します。

MTTFで評価すると、図1(b) に⽰すように、ほぼ同時間位置( \( MTTF_{ A } ≒ MTTF_{ B } \))で、信頼性という意味ではほぼ同等になります。しかし、最初の故障発生時間は\( f_{ A } ( t ) \)  の方が早いので、B10ライフの評価では\( B_{ 10A } \lt B_{ 10B } \) になり、\( f_{ B } ( t ) \)のほうが良い(寿命が長い)という結論が得られます。

図1 B10ライフの考え方  ORIGINAL

 

 

 

 

参考文献
QC検定2級 品質管理の手法50ポイント  内田治  日科技連  2020年
故障と加速試験  岡本秀孝   エレクトロニクス実装学会誌 Vol.21 No.4 2018年
メカトロシステムの信頼性工学  藤崎定昭  槙書店 1985年

引用図表
図1 B10ライフの考え方  ORIGINAL

 

ORG:2024/03/11