8D問題解決手法(8Dレポート)

8D問題解決手法(8Dレポート:8D report)

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1. 8D問題解決手法(8Dレポート)とは

8D レポートとは、”8 Discipline report” の略で、”Discipline” は、日本語で「規律」の意味があります。
不良発生時に、サプライヤに発生原因の報告や、応急処置、再発防止処置を要求する際に、自動車業界でよく用いられます。日本語では、8D問題解決手法ともいいます。
大元は、アメリカの軍用規格 MIL-STD-1520 ” MILITARY STANDARD: CORRECTIVE ACTION AND DISPOSITION SYSTEM FOR NONCONFORMING MATERIAL” に源流があります。これをフォード社が問題解決法として採用し、1987年に問題解決法と命名しました。当時フォード社は動力システムの不具合が大きな問題となっていました。この8D解決法を採用することにより、問題解決に大きく貢献しました。以後、組織的な問題解決プロセスが必要な自動車部品メーカ、電子部品製造メーカに広く普及してきました。
中国では、G8D(Global 8D)との名称でも、使われているようです。
自社の不適合連絡書兼再発防止対策書の様式がある場合はそれをお使いになればよろしいですが、お持ちにならない場合は、8Dレポートの様式は全て埋め込むことにより再発防止まで含めて完成するので、非常に役に立つと考えます。

2. 8Dレポートの概要

8Dレポートは、D0レポート、D1レポート、… D8レポートの9つのレポートから構成されます。当初はD0レポートは無かったのですが、不適合内容を示すD0レポートが後で追加されました。
8Dレポートの特徴としては以下のようなものがあげられます。
・チームワークの重要性を強調し、プロセスの問題を解決するだけでなく、新たな問題の発⽣を防⽌できる。
・根本原因(ルートコーズ)や不具合メカニズムに到達しているかを、当事者・関係者が確認できる。
・是正対策が根本的なもので、さらなる本格対策が必要かを検討できる。
・対応策が横展開できるような内容になっているか、仕組みに反映できているかを確認できる。
・”IS/IS NOT” や、特性要因図、FMEA、実験計画法、なぜなぜ分析など多くの統計的手法が含まれている。


図1 8D問題解決手法  ORIGINAL

8Dレポートは、次に示す8つ(+1)の手順に従って行います(図1)。
・D0:計画と準備をする。   ←:不適合内容を記入して発行する。
・D1:チームを編成する。
・D2:対象の問題を明確化する。
・D3:応急処置を施す。
・D4:問題の根本原因を解明する。
・D5:根本解決策を策定する。
・D6:解決策を実施しその有効度を確認する。
・D7:再発防止策を施す。
・D8:完了手続きとメンバーを公で感謝する。

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3. 詳細手順

次に詳細な手順を順番に示していきましょう。

3.0 D0:計画と準備をする。

具体的なクレームの内容を記入します。例えば、
・不適合内容:不適合発生日、不適合品発生状況、不適合品個数(機番)、不適合報告書発行番号
・発行時の情報:発行日、発行者担当者;氏名、TEL、e-mail address
・8Dレポートの発行先
・要求される日程、期限
など、開示可能な範囲でできるだけ詳しく記述しましょう。
この他、社内的な問題で、検査直行率を改善したい、慢性的な納期遅れを解消したいなど、社内的な問題についての改善取組みにも用いることができる考え方です。

3.1 D1:チームを編成する。

D1~D8の各ステップのプロセスを通じて効果的に作業するため、問題について知見と必要とされる技術・技能を有する人員により小規模なチームを編成します。できるだけ品質、技術、製造、保全など各部門から広く部門横断的に選出するようにします。ただし、人員が多すぎるのは禁物です。

3.2 D2:対象の問題を明確化する。

5W2H(Who, What, Whwn, Where, Why, How, How many)の視点で、顧客/社内の問題を特定し、定量化するようにします。
ポイントとしては、以下のとおりです。
・できる限り多くのデータを収集する。
・時系列的に変化するデータや、サンプル数が多いなど、一気に入手が困難なデータも必要に応じて収集する。
・問題を正確に表現する。

3.3 D3:応急処置を施す。

是正対策が実施させるまで、問題の拡大を防止するため、暫定対策を検討し実施します。暫定対策の効果を検証する必要があります。
応急処置のステップは以下の通りになります。
・工程・システムを停止
・不適合品を取り出し・隔離
・応急処置の対象となるもののリストの作成
・応急処置に関する同意を得る
・応急処置の案を検証
・応急処置の実施
・応急処置の文書化

3.4 D4:問題の根本原因を解明する。

問題を発生させうる、全ての潜在的な原因を洗い出します。問題とデータを検討し、潜在的原因の推定または実地確認によって、根本原因を検証します。
根本原因の解明と検証のステップは、以下のとおりです。
・不具合の状況を再検討(定量化・情報)
・事実関係(Is/Is Not)リストの作成、検討
・変更の時系列リストの作成、検討
・可能性のある要因のリストの作成、検討
・可能性のある要因と事実を対比
・可能性の高い根本原因の検証
・根本原因を文書化

3.5 D5:根本解決策を策定する。

D4レポートで解明した根本原因を排除するために、是正処置を⾏います。この是正処置が有効であるかどうかを検証します。根本原因が複数存在する場合には、それぞれについての是正処置を行います。
一つの根本原因に対する是正処置は必ずしも一つとは限りません。是正処置は複数存在する場合があります。
多くの場合、是正処置実施後には生産管理に必要なリソースは上昇します。従って想定される是正処置はなるべく多く検討して、その効果を比較し、より少ないコストやリスクで対応できる是正処置を見出すことが必要です。
ここで注意するポイントは、是正処置の妥当性をロジカルに説明したり、誰の判断(責任)でこの対策が遂⾏されたのか、対策の実施⽇、ロット(シリアル)番号による管理を厳重に行う必要があります。

3.6 D6:解決策を実施しその有効度を確認する。

D5で実施した是正処置の内容が適切であるかの検証、評価を行います。D5では、是正処置の短期的な有効性を検証しましたが、中長期的に見ても、是正処置が妥当かどうかについては、ある程度の期間継続して、その妥当性を検証する必要があります。
是正措置が不⼗分であると判定された場合、再度D4からのプロセスを実⾏します。

3.7 D7:再発防止策を施す。

再発防止は、同様の問題が二度と起こらないようにすることです。是正処置を導入しても形骸化してしまっては意味がありません。組織の仕組みとして落とし込むことで、4Mの変化に対しても再発防止効果が継続することになります。
是正処置が十分と判断される場合、その是正処置を他の類似工程や、将来に起こり得る不具合を回復するために役立てるようにしましょう。類似工程を含む現場では、同様の原因による問題の発生のリスクが潜んでいます。

3.8 D8:完了手続きとメンバーを公で感謝する。

問題を起こしてそれが解決したとして、感謝(文献によっては称賛)というのは、日本人の感覚からは、ナゼ?と思うことがありますが、8Dレポートが欧米起源の問題解決のワークフローなので、このような概念が含まれます。
実際的には、今回の活動における改善すべき点や、継続すべき良かった点を含めた問題解決プロセスを文書化して、組織内の知恵を共有するようにします。

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4. 8Dレポートを用いる長所と短所

一般的に考えられる、8Dレポートの長所と短所を簡単に示します。

4.1 8Dの長所

・自社と顧客とで、課題に対して共通の認識を持つことができる。
・問題の根本原因を発⾒して、問題を除去するために暫定処置及び恒久対策を実施することができる。

4.2 8Dのデメリット

・8Dによる問題の解決の流れを、関係者全員が理解して、訓練する必要がある。
・データを収集し分析するための手法の理解と使うための能⼒が必要となる。

5. 8D問題解決手法が、手法として優越な場合

問題解決手法としては、問題の複雑さの程度により、いくつかのレベルに分けられます(図2)。


図2 問題の複雑さに応じた問題解決手法  ORIGINAL

8D問題解決手法の使用が適切な場合としては、以下のようなものがあげられます。
・問題の原因が不明な場合。
・繰返し発生の問題の場合(おそらく以前の問題解決の試みは失敗している)。
・重大な問題である場合(例えば,高コスト案件,安全上の問題,等), および問題が後続する作業または関連する作業に影響する場合。
・問題の定義が難しく,チームワークが必要な場合。
・特に顧客が関与している場合で,問題および解決策に関して意見の相違を考慮しなければならない場合。
・問題とその解決策を顧客・社内各部署に報告する必要がある場合。

6. まとめ

8D問題解決手法は、問題解決手法として、QC7つ道具など、比較的現場サイドでなじみのある品質手法を用いて、ある程度複雑な課題に対応できる、適用範囲の広い手法です。
是非、皆様が抱えている課題の解決に適用してみてください。

7. 様式

8D問題解決手法の様式例(図3)を示します。

図3 8D問題解決手法の様式例  ORIGINAL

8D問題解決手法様式

 

参考文献
某社8D report講習会資料 他

引用図表
図1 8D問題解決手法  ORIGINAL
図2 問題の複雑さに応じた問題解決手法  ORIGINAL
図3 8D問題解決手法の様式例  ORIGINAL

ORG:2023/09/02